最新記事

米経済

中間選挙は歴史的に株価上昇要因

2010年11月2日(火)18時06分
アニー・ロウリー

 1945年以降だけで比較しても、この傾向は変わらない。正常期には10・7%、部分的なねじれ期には7・6%づつ上昇したのに対し、完全なねじれ期は3・5%増に留まっているのだ。

 もちろん、景気が悪化した結果としてねじれ議会が生まれ、政治が膠着したという見方もできないわけではない。だが投資家への報告書の中でストーバルは、完全なねじれ状態が株価にマイナスに働く原因は不確実性にあると指摘している。ねじれ議会は優先順位を示すことができず、ねじれ政局につきものの内輪もめが企業活動に悪影響を及ぼすというのだ。

「11月2日の選挙でねじれ議会が生まれた場合、その結果生じる不確実性によって、すでにある多大な懸念要素にさらなる不安が加わる。そして、大統領の任期3年目に典型的にみられる株式市場の好況が損なわれるだろう」 

 もっとも、ストーバルが検証したのはS&P指数に使われる500銘柄だけ。一方、市場全体と政治の関係を調べた調査もある。ウィスコンシン大学オシュコシュ校のスコット・ベイヤーらが2004年にポートフォリオ・マネジメント誌に発表した研究を見てみよう。

 ストーバルと同様、ベイヤーらの調査でも、ねじれ期には大企業の株価は伸び悩んでいた(正常期より上昇率が0・8%低い)。ただし、ねじれ議会の悪影響が最も顕著に表れたのは、変化に適応する体力が乏しい中小企業だった。正常期には年率23.5%の伸びをみせた中小企業の株価は、ねじれ期には11.4%増に留まった。

オバマ改革の撤回にも市場は批判的

 こうした研究を受けて、市場アナリストの間では、「議会はウォール街の成長を邪魔する存在だ」という従来の常識に疑問を投げかける声が広がっており、ねじれ政局は株式市場にマイナスだという考え方が受け入れられつつある。

 BMOキャピタル・マーケッツのストラテジスト、アンディ・ブッシュは、投資家は中間選挙後の2年間の株式市場を色眼鏡で見ていると指摘する。「(オバマの)死に体政権の2年間にブッシュ減税が延長されることは、市場では折込済みだ。ブッシュ減税が延長されなかったり、金融の量的緩和が予想より小規模に終わった場合、市場が幻滅する可能性がある。特に株式譲渡益(キャピタルゲイン)課税の税率が引き上げられれば、株式投資のマイナス材料となる」

 しかも共和党は、法案の審議に応じない一方で、オバマ政権が実現した政策の廃止や予算打ち切りに積極的に取り組むと表明している。そうなれば、すでに不安定な市場において不安定要素がさらに増える。

 共和党は「オバマケア(オバマの医療保険制度改革)を完全に撤回させる」と、共和党下院議員のマイケル・ペンスはCNNに語った。「支出と財政赤字、借金の急増にピリオドを打つことについて一点の妥協もできない」

 政治の混乱がもたらす甚大な影響を、市場はあまり考慮していないようだ。FTIコンサルティングが最近行った世論調査では、回答した企業と投資家の大半がオバマ政権を支持しておらず、民主党のせいで不確実性が増し、企業の業績に悪影響を及ぼしていると答えた。ねじれ議会の誕生によって事態が好転すると予想する人は63%。ただし同時に、調査対象の半数以上が共和党はオバマが立ち上げた医療保険制度の廃止や大型案件への予算停止ではなく、民主党との協調に力を入れるべきだとも答えている。

 つまり、彼らはねじれ議会に何もせずにいてほしいのだ。そして少なくとも一部の共和党議員は、彼らの期待に応えてひたすら政治の膠着状態を加速させるだろう。

Slate.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア西部2州で橋崩落、列車脱線し7人死亡 ウクラ

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 8
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中