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欧州銀行のストレステストは大甘査定

2010年7月21日(水)16時00分
シュテファン・タイル(ベルリン支局)

 金融危機が世界の金融市場を揺さぶってから約3年。ヨーロッパ各国はついに銀行を対象にした厳格な健全性審査「ストレステスト」に踏み切った。7月23日には結果が報告される予定だが、どの金融機関が今後起きる危機を乗り切ることができるか示すことで、失われた投資家の信頼を回復すると期待されている。

 問題はストレステストの厳格さに疑いの目が向けられていること。ヨーロッパの金融機関は以前から透明性の低さが指摘されてきたのだからなおさらだ。厳しい審査や公聴会が行われてきたアメリカと違い、ヨーロッパ諸国の多くは金融業界への厳格な取り締まりを避けてきた。

 7月14日にはドイツ産業銀行(IKB)の経営状態に関する虚偽の情報を投資家に流したとして、元CEOのシュテファン・オルツァイフェンに有罪判決が出た。IKBはヨーロッパの中でもハイリスクな取引に手を染め、いち早く公的資金の注入を受けた銀行の1つ。だが判決がオルツァイフェンに求めたのは10万ユーロの慈善事業への寄付と執行猶予付き懲役10カ月の刑だけだった。

 しかもIKBのエンロン張りの会計処理法に関しては今も何ら調査は行われていない。ドイツ連邦議会による喚問でも、金融危機の発生について国内の銀行が果たした役割を問う厳しい質問は出なかった(ニューヨーク連銀は制御不能な金融危機の発生にヨーロッパ、とりわけドイツの銀行が重要な役割を果たしたと名指ししている)。

 今こそヨーロッパの銀行は信頼回復に努める時だ。中途半端な調査はさらなる市場の不信しか招かない。

[2010年7月28日号掲載]

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