最新記事

原油流出

暴落BP株は今が買い時か

株価の15%下落などまだ甘い。流出が止まらなければ、BPが他社に買い叩かれるのは時間の問題だ

2010年6月8日(火)17時41分
マシュー・フィリップス

大きな負債 原油まみれになった野生動物への返済は高くつく(6月5日、ルイジアナ州クイーンベス島) Sean Gardner-Reuters

 英石油メジャー、BPの株は今が買い時らしい。少なくとも、BPの株価予想を生業にしているアナリストたちはそう見ている。

 先週、金融情報サービスのブルームバーグが17人のアナリストにBP株の投資評価を聞いたところ、12人は「バイ(買い)」だった。残り5人は「ホールド(中立)」で「セル(売り)」は1人もいなかった。もちろんアナリストは滅多にセルの評価は出さないし、ホールドは事実上セルと同じだ。

 それにしても、本当にこれでいいのだろうか。BP株は2日前に15%暴落し、時価総額にして300億ドルが吹き飛んだばかりだというのに、売却を推奨るアナリストが1人もいないなんて。

 もっとも、危機のときこそ株を買えというのは昔ながらの投資戦略。BPが起こしたメキシコ湾での原油流出事故のような惨事には、人々は総じて過剰に反応する。震え上がった人々は、事故に少しでも関係しそうな企業の株を一斉に売り始める。そこへ情報通の投資家が腕まくりをして突進し、安くなった株を買いあさる、という寸法だ。

 今がまさにその時だ。原油流出事故が発生した4月20日以降、BP株は40%近く暴落し、時価総額にして1830億ドルから約1150億ドルに急減した。情報通と言われる投資家たちは、この株価下落が一時的なものに過ぎないと考えている。世間が正気を取り戻し、1日約1万9000バレルの原油流出が企業を破滅させるほどの大惨事のわけはないと気づけば株価は回復する、という見方に賭けているのだ。

BP株がまだそこそこ高い理由

 フィラデルフィアのTCPグローバル・インベストメント・マネジメントのマネジング・ディレクターで、ブルームバーグが調査したアナリストの1人でもあるジェラルド・E・スネリウスは、38ドルとうBPの株価は「最悪の惨事に対応する水準であり、最悪の惨事より少しでもいい材料が出てくれば株価は上がる」と言う。

 もちろん、最悪の惨事より少しでもマシな材料があるなら願ってもないことだ。BPの株主にとってだけではない。ペリカンや漁師、そして人類すべてにとってもうれしい知らせだ。

 だが、疑問も沸く。もし今の株価が最悪の惨事の値段だとしたら、38ドルは高すぎないか? なぜ0ドルではないのだろう?

 これは、最悪の惨事をどう定義するかによる。BPは原油の除去作業にすでに約10億ドルを注ぎ込んだ。早く「自分の生活を取り戻したい」という失言で名を馳せたBPのトニー・ヘイワード最高経営責任者(CEO)は、作業にかかる最終的なコストは約30億ドルにもなり得ると語った

 だがこの見積もりも、安過ぎると嘲笑されてしまった。「ウォール街はこの見積もりを信じていないと断言できる」とニューオーリンズを拠点とする原油アナリストのブレーク・フェルナンデスは言う。本当のコストはおそらく100億〜300億ドルの域だろう。

 BPの財務悪化について様々な憶測が飛び交うなか、世間の関心はもはやこの石油大手が買収されるか否かを通り越して、「いつ」買収されるかに変わったようだ

 では、BPの実際の財政状況はどうなのか。まず良い点から挙げてみよう。BPは莫大な利益を生み出し、今も莫大なキャッシュを握っているということ。BPは今年1〜3月期だけで60億ドルと、前年同期の2倍以上の利益を上げた。フリーキャッシュフローは70億ドルに上る。

 フェルナンデスによると、原油価格が1バレル=60ドルを超える水準に留まるかぎり、BPがキャッシュを使い果たすことはない。先月の原油価格は1バレル=70ドル前後だったから、今のところは安泰に見える。

 BP株が今も魅力的な最大の理由は、この潤沢なキャッシュを原資として9%という好配当(会社にとっては年間100億ドルの支出)を払っているから。もっとも、民主党上院議員のチャールズ・シューマーとロン・ワイデンは今、配当支払いを延期するよう求めているが。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米2月求人件数、688.2万件で予想下回る 採用は

ワールド

イランのモジタバ師、国内に滞在も公の場控える━ロ大

ワールド

米国防長官、ホルムズ再開「各国の関与必要」 向こう

ワールド

イスラエル国防相「レバノン国境の全家屋を破壊」、住
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 8
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 9
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中