最新記事

経済

冬目前のカナダは好景気で沸騰中

2009年11月9日(月)14時33分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

 ここ1年間で、アメリカと距離を置くことが不況を断ち切る手段だということが証明された。アメリカと遠く離れた中国とオーストラリアは、まさに好景気。一方で国境を接するメキシコは、対米輸出の減少で今も苦しんでいる。

 だがアメリカがNAFTA(北米自由貿易協定)を結ぶもう1つの隣国カナダは、先進国のなかではピカイチの状態で泥沼から脱した。この夏に短期の不況から立ち直って以来、雇用創出にも拍車が掛かる(今年9月には、雇用者数が3万1000人の純増)。カナダドルも、対米ドルでうなぎ上りだ。「カナダは今、好景気に沸いている。国境より南とは正反対の状態だ」と、トロントの資産運用会社グラスキン・シェフのチーフエコノミスト、デービッド・ローゼンバーグは言う。

 カナダでは、不動産価格の高騰中も貸し出し基準が緩むことはなかった。不動産購入者はきちんと頭金を用意させられ、金利のみを支払う変動金利型のローンもなく、金融機関は自己資本比率を適度に維持。その結果、住宅ローンの焦げ付きは抑えられ、大きな金融機関が1つも破綻しなかった。

 世界経済フォーラムによると、カナダの金融システムの健全度は世界一。さらにカナダでは、工業製品の対米輸出が打撃を受けても、中国の経済成長のおかげで石油や天然ガス、金属、農業などの巨大な資源産業が好調だ。第1次産業がカナダ経済に占める割合は、アメリカの3倍。資本流入も堅調で、不動産市場も回復した。寒いはずのカナダは今、とてもアツい。

[2009年11月11日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中