最新記事

ボーイング

旅客機ドリームライナーの悪夢は続く

2009年11月2日(月)12時34分
マシュー・フィリップス

 度重なる納入延期で周囲をやきもきさせてきた米ボーイング社の次期主力旅客機「787ドリームライナー」が、年内にようやく初飛行するめどが立った。2010年後半には納入を開始するという。

 朗報に聞こえるが、ウォール街は懐疑的だ。モルガン・スタンレーのアナリスト、ハイディ・ウッドの最新リポートによれば、787の初飛行は10年に、受注済み840機の納入開始は11年春にずれ込む可能性がある。

 ボーイングのジェームズ・マクナニーCEOは先週の電話会議で第3四半期が16億ドルの赤字となったことを報告し、最後をこう締めくくった。「開発プログラムはもっとうまくやれるはずだ。やらなければならない」

 787が当初の予定どおり07年夏に初飛行していれば、今頃は利益を挙げているはずだった。ところが開発が遅れたせいで、かえって金食い虫に。次世代貨物輸送機「747‐8」の開発とも重なり、泥沼にはまっている。

 そもそも遅れが生じたのは計画を根本的に見直したため。787はより軽量で強い炭素繊維複合材を使う技術面だけでなく、製造面でもアウトソーシングした部品を半完成品として納入させ、3日間で最終組み立てを終わらせるという画期的手法を導入するはずだった。ところが外注部品に品質の劣るものがあったため、結局自社で修繕する羽目に陥った。

 ボーイングが今年既に7200人の人員削減を行っていることも管理部門の人員不足を招いていると、航空アナリストのリチャード・アブラフィアは言う。同社はこれまで防衛部門の稼ぎでしのいできたが、国防総省は現在大型兵器削減の真っ最中。「ドリームライナー」の離陸にかかる期待と負担はますます重くなっている。

[2009年11月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=

ビジネス

NY外為市場=ドルまちまち、対円では24年12月以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中