最新記事

中国経済

中国株は天井知らずなのか

景気刺激に失敗した欧米人を哀れむ余裕さえ見せる庶民。自信の根拠は政府に対する絶大な信頼だが

2009年10月1日(木)15時02分
ルチル・シャルマ(モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント新興市場責任者)

これぞ大躍進 建国60周年を前に、これまでの経済急成長を誇る展示(9月21日、北京) Jason Lee-Reuters

 現在の中国の株価は、07年10月に付けた史上最高値にまだ程遠い。しかし北京や重慶の街角に流れる空気から判断するに、「中国政府株」は今、最高値を付けているようだ。中国の中流階級は政府の実行力に対して多大な信頼を置いている。

 もちろん昨年秋の金融危機は多くの人に衝撃を与え、今年初めには雇用と収入の先行きに対する不安が広がった。しかし中国政府が驚くほど大規模な景気刺激策を打ち出し、それが設備投資回復の牽引役になったことに国民は感銘を受けた。昨年の危機は小さなつまずきにすぎず、中国はさらなる繁栄を目指して長い行進を再開した──ようにも見える。

 北京では、誰もが中国経済の回復ぶりをお寒い状況の欧米と比べたがる。タクシーの運転手は、アメリカ人やイギリス人の客には料金をまけてやるんだと冗談を言い、商店主は外国人観光客が店に来なくて残念だ、きっと「貧乏」で金がないんだろう、と笑う。

 中国人消費者は相変わらず元気いっぱいだ。それが最も顕著なのが不動産市場で、北京や上海といった一流都市ではマンション価格が史上最高値を付けた07年の水準まで回復している。

 香港もこのところ不動産ブームで、取引件数も価格も07年のピーク時を上回っているが、それも中国本土の投資家のおかげ。マカオのカジノ収入が7月に史上最高に達したのも、中国マネーによるところが大きい。

新規融資1兆ドルはどこに消えた?

 中国当局が世界のなかでいち早く経済成長に歯止めをかけようとしているのも無理はない。09年前半の金融機関による融資拡大で新たな融資は総額1兆ドルを超えたが(銀行貸付残高の総額はなんと対GDP〔国内総生産〕比150%にもなる)、その多くが実体経済に流れ込んでいない、と政策立案者たちは懸念している。

 新規融資の10~20%は、国内の株式市場に流れ込んだとみられる。そのため現在、金融当局は融資の抑制にやっきになり、中央銀行の中国人民銀行は過剰流動性の解消に努めている。

 中国政府が経済の過熱に歯止めをかけ、より正常な経済環境づくりを目指して政策を修正するのは正しい選択だ。中国は既に経済開発が十分に進んでいるため、過去30年間に及んだ年10%近い成長率を維持し続けることはできない。

 中国も「大数の法則(より多くのデータから求めた平均が真の平均値に近いという定理)」の例外ではあり得ない。高度成長期の日本や韓国など奇跡的な経済成長を成し遂げたほかの国と同様に、いずれは低成長を受け入れなければならなくなる。

 さらに、以前のような輸出の急拡大も期待できない。中国製品は既に世界市場でかなりのシェアを占めているし、アメリカなど主要な輸出先の見通しは明るくないからだ。

 もし中国が今後も10%成長を維持できたとしても、過剰投資によって生じる不均衡がいずれ大きなリスクをもたらすだろう。消費拡大が不均衡を是正するというのは誤解だ。確かに、中国の消費は現在GDPの40%未満で、日本などアジアのほかの国が今の中国のような高度成長期にあった頃の55~60%をはるかに下回っている。しかし問題は消費ではなく過剰投資にある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:カジノ産業に賭けるスリランカ、統合型リゾ

ワールド

米、パレスチナ指導者アッバス議長にビザ発給せず 国

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中