最新記事

金融

リーマン破綻1年後、本当の敗者

2009年9月15日(火)17時14分
ナンシー・クック

ウォール街は何も学んでいない

 ウォール街を外から観察していれば、リーマン・ショックと同じ危機が再び起きる可能性が高いことは明らかだ。アメリカ政府はリーマンの経営破綻を認めた一方、リーマンと同じく不良債権をかかえ、同じくデリバティブ商品やサブプライムローンのような危険な投資に手を染めていた他社には救済の手を差し伸べた。

 おかげでウォール街は「無敵のオーラ」を身につけたのではないかという懸念が高まっている。「あなたがウォール街のプレイヤーだとしよう。誰かが助けてくれるとわかっていれば、今のやり方を変えようとは思わないだろう」と、コロンビア大学経営大学院のアンドリュー・アング教授は言う。

 経済危機勃発から1年が経った今も、アメリカ政府は金融危機の再発を防ぐ改革を十分に進めていない。議会は金融業界に(公的資金注入のおかげで利益を得ている企業に対してさえ)規制を課す法案を通していないし、幹部報酬は相変わらず高額だ。JPモルガン・チェースのように、公的資金を低金利で借り入れ、ハイリスクの投資をして記録的な利益を上げたケースもある。

「企業は教訓を学んでいないと思う。結局は丸儲けだったのだから」と、シカゴ大学経営大学院のルイジ・ジンガレス教授(経済学)は言う。「私がCEOでも、リスクを取らないではいられないだろう」

 かつてのリーマン社員は、金融機関の破綻が二度と起きないでほしいと願いつつ、そうした希望が非現実的であることもわかっている。「私たちは程度の差こそあれ、過去にも同じ失敗を繰り返してきた。ドットコムバブルにS&L危機、そして今回はサブプライム危機だ」と、アムビンダーは言う。「今後20年間、別の危機が起きないとは思えない」

 アムビンダーに言わせれば、危機が繰り返すのは人々が失敗を忘れるから。そのうえ、今回の金融危機を引き起こした張本人たちが引き続きウォール街にい続けるのだから、危機の再発は避けられそうにない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 9
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中