最新記事

インターネット

MSヤフー提携はほとんど無意味

2009年9月2日(水)14時35分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

ヤフーが弱るのを待っていた

 真の戦いは「マイクロソフト対グーグル」だ。マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOはもう何年も、グーグルが検索広告で何十億ドルもの金を稼ぐのを見ながらじだんだを踏んできた。彼はその金が欲しかった。グーグルをつぶしたかった。ヤフーは、バルマーに必要なものを持っていた。それは検索市場でのまとまったシェアである。

 検索市場ではシェアが重要だ。大きければ大きいほど多くのデータを収集でき、より適切な検索結果を出すことができる。マイクロソフトのように10%足らずの市場シェアでは、プールの底が浅いほうでパチャパチャやっているようなもので、ジリ貧だ。どんなに優秀な検索アルゴリズムを開発しても、データが少なければよい結果を出せない。

 それこそ、グーグルの大きな強みだった。人が集まり、検索はますます便利になった。便利になれば、さらに人が集まる。

 だからマイクロソフトはシェアを拡大する必要があった。ヤフーはそれを持っていたが、手放したがらなかった。マイクロソフトは彼らの常套手段に訴えた。待つことだ。ヤフーがどんどん弱っていくのをじっと待った。そして提携の好機を見つけたのだ。

 より大きな戦いのなかで、ヤフーは単に利用されただけだ。この提携でヤフーは終わった。インターネット時代の最初の大いなる戦に決着がつき、ヤフーは負けた。車にひかれ道端で死んでいる動物と同じく、もう誰からも必要とされていない。

 そしていよいよ、次の大勝負が始まる。マイクロソフトとグーグルの戦いだ。

[2009年8月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中