最新記事

自動車

エコカー補助でも救えなかったビッグスリー

2009年8月26日(水)15時08分
ジュリー・ハルパート(ジャーナリスト)

 米オバマ政権の鳴り物入りで始まった「キャッシュ・フォー・クランカーズ(ポンコツ車のための現金)」制度。燃費のいい車に買い替えれば助成金を出すというこの制度は、景気対策と同時に環境対策を進めたいオバマ大統領の意欲の表れだった。

 ところが予想を大幅に上回る反応で、政府が用意した10億ドルは7月24日のスタートから1週間で底を突いた。議会が追加予算を認めたものの、ラフード運輸長官は8月20日、予定より2カ月以上早い同月24日に申請受付を終了すると発表した。

 誤算はそれだけではなかった。同制度のもう1つの目的は、景気低迷前から経営難にあえぐ米自動車産業へのてこ入れだった。

 ところが8月11日に運輸省が発表した統計によれば、同制度を利用して販売された車のうちアメリカ車の占める割合は42%。最も売れた10車種に入っているのはフォードの2車種だけで、トヨタとホンダが計6車種を占めた。

 景気対策としては悪いことではない。トヨタやホンダはアメリカに工場を持ち、アメリカの労働者やディーラーを雇っている。だが、アメリカの自動車メーカーの「カンフル剤」にはならなかったと、ミシガン大学経営大学院のジェラルド・マイヤーズ教授は指摘する。

 ケント・ネッセル(38)は、98年型ジープ・チェロキーを日産のヴァーサ(日本名ティーダ)に買い替えた。アメリカの税金を使った制度で外国車を買うのは「悪いと思った」が、希望する燃費水準のアメリカ車は少なかったとネッセルは言う。「ビッグスリーが外国メーカーに匹敵する車を作っていたら、それを選んでいたのだが」

[2009年9月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 6
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 7
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 8
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中