最新記事

中東

実は後退しているアラブ経済

1人当たりGDP成長率は30年前と変わらず、工業化はむしろ後退──国連報告書に見る中東経済のトホホな実情

2009年7月22日(水)16時39分
ケーティー・ポール

砂上の楼閣 ドバイが火をつけた不動産ブームはレバノンにも広がったが(ドバイ、08年10月) Steve Crisp-Reuters

 国連開発計画(UNDP)が21日、今年の「アラブ人間開発報告書」を公表したが、概して驚くべき内容ではない。詰まるところ「戦争=不安定=ビジネスに有害」ということだ。だが経済について述べた第5章は2つの理由で一読に値する。

 理由1:GDPの乱高下

 報告書は、中東・北アフリカ(MENA)地域の不安定性に関する疑問にかなりの程度答えてくれる。この地域の1人当たりGDP(国内総生産)成長率は、数十年にわたりジェットコースターのように激しく乱高下した末、80年の水準とほとんど変わっていない。

 理由2:工業化は後退

 アラブ世界の経済成長は極めて不規則なだけではない。


 1人当たり(のGDP成長率)で見ると、アラブ世界の経済成長はかなり低い。それと相応して、生産部門(特に製造業)は不振が続いてきた。実際、現在のアラブ諸国の工業化は40年前よりも後退している......。石油主導の成長も労働市場にマイナスの影響を与えてきた。一部のアラブ諸国は現在、世界最高の失業率(とりわけ若者の間で)を記録しており、人間の安全保障に重大な影響をもたらしている。


「何一つ物を作る方法を知らない」

 私が最近インタビューしたレバノン人の政治経済学者は、ドバイに端を発する不動産ブームがいかに(レバノンの首都)ベイルートを大きく変えたかを指摘していた。06年のイスラエルとの戦争の最中でさえ、ベイルートではクレーンや油圧ショベルが騒がしく動いていたという。

 その一方でレバノンには輸出可能な生産部門がないことを彼は嘆いていた。「われわれは何一つ物を作る方法を知らない。わが国がどういった分野に強いのかも分からない」。それはアラブ世界全体も同じようだ。

 だからこそINJAZ(アラブの学生に職や経済に関する講義・体験学習の場を提供する組織)のような活動が重要になる。

 ヨルダンで始まったINJAZは先月、エジプトで起業家のコンテストを開催。その様子は米公共放送PBSの番組「フロントライン・ワールド」でも紹介された。楽観的で建設的な活動を見るのが難しいこの地域で、INJAZは新しい風(と良質な楽しみ)をもたらしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド4─6月期GDP、7.8%増 米関税の影響に

ワールド

安全保障巡り「首脳レベルの協議望む」=ウクライナ大

ワールド

ロ軍、ウクライナへの進軍加速 1カ月最大700平方

ワールド

カナダGDP、第2四半期は1.6%減 米関税措置で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中