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世界経済

二番底リスクの恐るべきシナリオ

2009年6月12日(金)15時49分
ラーナ・フォルーハー(ビジネス担当)

 市場関係者の間では、世界景気が二番底を打つ可能性がささやかれている。景気は一旦回復しても、今後2~3年のどこかで再び落ち込むだろうというのだ。

 この景気の二番底シナリオについて興味深いのが、仏保険大手アクサ・グループのエリック・チェイニー首席エコノミストの説だ。チェイニーは各国政府が今後発行する莫大な量の国債が原因となって引き起こされる債券市場危機が、景気に二番底をもたらす可能性が高いと予測する。

 先進国が08~10年の間に行う借り入れの増加分は2兆5000億謖前後、つまり世界のGDP(国内総生産)の4%と気の遠くなるような金額だ。もちろん、新興経済国が必要とする借入額はさらに大きい。

 「貸し手は(借り手にとって)妥当な価格でこれらの債券を引き受けてくれるのか。各国政府のやり方は(巨額詐欺で訴追されたナスダック元会長)バーナード・マドフと同じねずみ講ではないのか」と、チェイニーは疑問を呈する。

 いい質問だ。現在のところは消費者も企業も自分たちのバランスシートの調整に忙しく、特に問題はみられない。

 だが景気が回復基調になり、企業が再び資本を求めて市場に出ていけば、企業は政府と張り合うことになる。しかもそれは、米連邦準備理事会や欧州中央銀行が金融緩和策を終了し始めるタイミングと重なる可能性が高い。

 そうなれば、債券の利回りが急騰して価格は暴落し、94年に起こった米債券危機の再来を招く可能性がある。しかも今回は、世界規模の危機につながる可能性があるとチェイニーは言う。  

 チェイニーが正しければ、この二番底は11年頃にやって来る。この先、景気にはでこぼこ道が待っている。財布のひもはしっかり締めておいたほうがよさそうだ。

[2009年6月17日号掲載]

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