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新しい未来を創った革新者の軌跡

ジョブズ、天才の素顔

暗黒のエネルギーも含め
彼を伝説たらしめたもの

2011.12.15

ニューストピックス

新しい未来を創った革新者の軌跡

大学を中退した若者はアップルを創業し、世界の「明日」を何度も変えた──スティーブ・ジョブズの全功績と彼が私たちに残してくれた大きな遺産

2011年12月15日(木)12時31分
アラン・ドイチュマン(ビジネスジャーナリスト)

 83年3月20日、スティーブ・ジョブズは飲料大手ペプシコのジョン・スカリーCEOと共に、ニューヨークのメトロポリタン美術館にいた。何カ月も前から、アップルの経営パートナーにとスカリーを口説いていた。

 美術館を出た2人は歩いてセントラルパークを抜け、後にジョブズが購入することになる高層マンション「サンレモ」に向かった。そして西側のバルコニーに立ち、ハドソン川を見渡しながら、ジョブズは歴史に残る極上の口説き文句を切り出した。

「残りの人生を、ずっと砂糖が入った水を売って過ごすか。それとも世界を変えるチャンスに賭けるか」

 この言葉は「insanely great(狂ったようにすごい)」や「think different(発想を変えよう)」と並ぶジョブズの名言の1つとなった。

 このせりふが説得力を持つのは、当時まだ28歳のジョブズが既に世界を変えていたからであり、その後も幾度となく世界を変えてきたからだ。

 ジョブズがビジネスとテクノロジーの両面で私たちの時代を代表する人物の1人であることは間違いない。だが文化的にもその影響力は大きく、斬新なアイデアを生み出し、実践し、その正しさを実証してきた。

 ビジネスと仕事が創造力や充実感、人生の意義の源になり得ることを示し、企業が文化を変えられることを示し、技術者や経営者もアーティスト感覚で考えるべきことを示し、優れたデザインと美意識が競争力の源となることを示した。

 貪欲なまでに完璧さを追い求める姿勢もまた、ジョブズの忘れ難い一面だ。アップル創業から間もない時期には、ソニーの販促マテリアルを研究してブランド構築やマーケティングのノウハウを吸収した。

 完璧主義は家庭生活にも及んだ。カリフォルニア州のロスガトスとウッドサイドに購入した最初の2軒の家は、ぴったりの家具が見つからないために何年も空っぽのままだった。

ぶれずに直感を信じて

 製品デザインに関しては、市場調査や消費者グループの意見に頼らず、たとえ業界の常識に反していても自分の直感に従った。iMacの開発中も、「ディスプレイ一体型は消費者に受けない」という調査結果にびくともせず、同僚にこう言った。「僕は自分の欲しいものを知っているし、みんなが欲しがるものも知っている」

 もちろん、彼は正しかった。大衆の好みを「追う」のではなく「リードする」センスこそが、彼のたぐいまれな才能において何より重要なものだった。だがそんな彼にも、完全な失敗に限りなく近づいた時期がある。

 バルコニーでジョブズに口説き落とされ、CEOとしてアップルに加わったスカリーは、わずか2年でジョブズを見限り、アップルから追い出した。一番親しみを感じていた男に裏切られたジョブズは、ある友人が「自殺するのでは」と恐れたほど激しく落ち込んだ。

 いっそのことフランスに渡って気ままに暮らすか、ウッドサイドの豪邸に引っ込んで庭いじりでもして過ごすか──。そんな現実逃避の空想もしたが、結局は21歳のときから追求してきた道を貫くことになった。

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