最新記事

子供時代に憧れた神道は心の羅針盤

続 ニッポン大好き!

味噌、ネイル、短歌、神道とロボット
「和」の凄さは外国人の匠に聞け!

2010.08.06

ニューストピックス

子供時代に憧れた神道は心の羅針盤

ウィルチコ・フローリアン(上野天満宮神職)

2010年8月6日(金)12時05分
佐野尚史

神に仕える ウィルチコは神社本庁が認める初の外国人神職になった Courtesy of Florian Wiltschko

「ヨーロッパにもこれほど神道に興味をもつ人がいるのか」

 上野天満宮(名古屋市)で宮司を務める半田茂は、01年にウィルチコ・フローリアン(21)と知り合ったときの印象をそう振り返る。神道の英語解説をホームページに載せているため、半田が国外から質問を受けることは珍しくない。だがオーストリアで暮らす少年は執拗だった。「お守りの意味から神道の歴史まで、しつこいくらい質問した」とウィルチコは言う。

 そんな交流を続けて6年。彼は07年4月からついに半田の下で神に仕える生活を始め、神社本庁が認める初の外国人神職になった。

「神道には多神教ならではの寛容さがある」とウィルチコは語る。「それに戒律がなく、善悪は自分で判断しなければならない。何かを禁止された宗教よりもレベルが高いと思う」。自ら実践する「清く、正しく、明るく、直く」という神道がめざす心構えにも、彼は独特の魅力を感じている。

 神道との出合いは4〜5歳のころ。写真集で見た浅沓(神職が履く木製の靴)に不思議な魅力を感じた。好奇心はやがて探究心に変わり、英語の文献を読みあさった。「14歳のときには自宅に神棚があった」とウィルチコは言う。

 現在は一時帰国し、休学中だったウィーン大学に復学している。大学の学位を取得すれば、さらに上の階位をめざせるからだ。

 加えて半田の強い勧めもあった。「内からは出てこない視点や意見は文化の個性を光らせる。それは神道にもあてはまる」と半田は言う。「彼には将来、意見を言えるようになってほしい。そのために一度日本を離れて神道や日本文化について考えほしかった」

 ウィルチコの口からはまだ神道に対する憧憬の言葉しか出てこないが、「いつか神社界の役に立ちたい」との思いは強い。ひたむきな青年の挑戦は始まったばかりだ。

[2008年10月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機

ビジネス

再送米経済「対応困難な均衡状態」、今後の指標に方向
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中