最新記事

英語でも通じる落語パワー

ニッポン大好き!

鉄ちゃんからキャラ弁、憲法9条まで
外国人の匠が語る日本文化の面白さ

2010.05.21

ニューストピックス

英語でも通じる落語パワー

ダイアン吉日(英語落語家)

2010年5月21日(金)12時06分
山中泉

チャレンジ精神 イギリス人女性を主人公にした創作落語など、新たな落語の可能性を模索するオレット COURTESY OF DIANE ORRETT

 リバプール出身の英語落語家、ダイアン吉日(本名ダイアン・オレット)にとって、秋は忙しい時期。全国の学園祭や祭りの出演で多いときは週6〜7回、高座に上がる。出囃子はビートルズの「イエローサブマリン」だ。
 
 落語を生で見るのは初めてという若い日本人の客も多い。だがシンプルな英語なのでわかりやすく、一度噺を聞けばかなりの人が興味をもつ。登場人物は威張った侍や腰の低い宿屋の主人など、何世紀も前の日本人だが、「今でもどこにでもいそうな人」ばかり。だから国籍を問わず観客は感情移入できると、オレットは語る。

 来日当初に英語落語の先駆者、桂枝雀の公演を見て落語に興味をもった。噺家が一人正座しているだけだが、何人もの人物を演じ分け、扇子などを器用に使って動きを出す。「うどんをすする情景が浮かんできた」とオレットは言う。「スタンダップコメディーのように話し手が観客に感想を述べる漫談は世界にあるが、登場人物になりきる形式は珍しい」

 そんな日本独特の「シットダウンコメディー」のプロになろうと大阪の英語落語道場で学び、今では自作の創作落語もある。日本を訪れたイギリス人女性のアンラッキーな一日を描いた『最悪の日』は得意な演目の一つ。高座名は「大安吉日」にちなんだ(ホームページはこちら)。

 外国公演では、日本の伝統的な情景や習慣を観客が理解できないという壁もある。昨年行ったアメリカ公演では、演目の『饅頭怖い』を『寿司怖い』にアレンジした。「英語落語は日本人の生活や感情を外国人に伝えられる。逆に創作落語で外国人の気持ちを日本人に伝えることもできる」。

 そんな落語は最良のコミュニケーションの手段だと、オレットは考えている。

[2008年10月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パリのソルボンヌ大学でガザ抗議活動、警察が排除 キ

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF

ビジネス

独CPI、4月は2.4%上昇に加速 コア・サービス

ワールド

米英外相、ハマスにガザ停戦案合意呼びかけ 「正しい
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中