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2010.05.21

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東京の下町で描く大和絵の心

アラン・ウエスト(画家)

2010年5月21日(金)12時00分
山中泉

 自らを「屏風絵師」だというワシントン出身の画家アラン・ウエスト。目標にしているのは、江戸時代よりも前の日本の絵画だ。「現代日本画を描いているというより『大和絵』をやっているつもり」と、ウエストは強調する。

 大和絵とは、国宝『紅白梅図屏風』で知られる尾形光琳などの琳派や、室町時代から江戸時代まで幕府の御用絵師だった狩野派に代表される豪華絢爛な絵画だ。対して日本画は、欧米風の洋画に対応した明治以降の日本の絵画を指す。

 ウエストの作風は、人の背丈ほどもある大型の屏風や掛け軸に、赤青緑の原色と金銀箔を使って、松や草木などの自然美をテーマに描くもの。日本だけでなく海外でも高く評価され、個展や美術館での展示は数知れない。

 大和絵は繊細かつ大胆な線が魅力だが、ウエストによれば、それがむずかしい。江戸時代の絵師は現在の絵筆とは異なる筆を使っていたからだ。そのため彼は、書道用の筆を愛用している。

 それだけではない。「矢立て」と呼ばれる小さな携帯用の筆とすずりを常に持ち歩き、デッサンにも文字を書くときにも使う。「昔の人は筆を常に使い、体の一部になっていた」とウエストは言う。「だから昔の人の描く線は、簡単にはまねできない」

 そんなウエストが限界を感じることもある。自動車修理工場を改修したアトリエは東京・谷中の古い寺や住宅の立ち並ぶ中にあり、道行く人も中を見通せる。ウエストが裏で筆を洗っていると、アトリエに入って来た通りすがりの客が絵を見て、「こんなに日本的な絵は久しぶりだ」とつぶやく。

 そこでウエストが表に出ていくと、日本人の作品だと思っていた客は、画家が日本人でないのを見て「でもやはりどこか違うと思った」という顔をする。「そんなことが年に1回はある。きついな、と思う」とウエストは苦笑いする。

 子供のころから植物を描いていたウエストには、自分も長年筆を握ってきたという自負がある。だから家系や血筋といった考えは嫌いだ。「茶道の家元に生まれたって、みんなゼロから始める」

 ゼロから始めた者の強みだろうか。彼は伝統を継承するだけでなく、掛け軸をビニール素材で作るなど革新的な作品も生み出している。「古いものは新しく、新しいものは古い」と彼は話す。

 谷中に根を下ろしたウエストの大和絵探求の旅は、今も続く。

[2008年10月15日号掲載]

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