最新記事

パトリック・スウェイジ(アメリカ/俳優)

今年を駆け抜けた人に
さようなら

世界に大きな影響を与えた
著名人・スターの軌跡

2009.12.08

ニューストピックス

パトリック・スウェイジ(アメリカ/俳優)

『ゴースト/ニューヨークの幻』など多数の映画に主演。87年の『ダーティ・ダンシング』では女性ファンが映画館に通いつめて一種の社会現象に

2009年12月8日(火)12時09分

戦い続けたスター すい臓癌を患い闘病生活を続けていたが、合併症のため9月15日に57歳で死去(写真は03年当時) Reuters

 ポーラ・R(仮名)、40歳。映画『ダーティ・ダンシング』の熱烈なファンだ。彼女はこの映画をすでに8回も見ている。そのくせ、やめようと思えばいつでもやめられるなんて、強がりを言っている。「25回も見れば、きっと飽きるわよ」というポーラは、どうみても自分を見失っている。典型的な「中毒症状」を起こしていることに気づいていないのだ。

 一部の批評家は、この映画を単なる夏休み向け娯楽映画と片づけた。ところが、ここにきて一部ファンの間で異常な人気を呼んでいることが判明したのである。

 63年ごろのニューヨーク州東部の保養地を舞台に、育ちのまるで違う2人のロマンスを描いたこの映画は、全米各地の映画館で今でも上映中だ。それほどの人気になったのは、おそらく何度も飽きずに見に来る観客たち----そのほとんどは女性----がいるからだ。
 
 たとえば、ミシガン州に住むマロリー・ロングワース。彼女はこの映画をときには1日に2回も見に行くようになってから、20キロ以上ものぜい肉を落とした。「食事の代わりに映画を見ていたから」と、ロングワース。彼女は最近、125回目の記録を達成したばかり。

抗しがたい主役スウェイジの魅力

 ベストロン映画社が600万ドル以下の製作費で作ったこの作品は、すでに5000万ドル以上の売り上げを記録している。映画のサントラ盤も、マイケル・ジャクソンやブルース・スプリングスティーンを抑え、300万枚以上を売って全米1位を6週間維持した。ファンは映画入場券の半券を靴の箱の中に集めたり、スクラップブックに貼ったり。2万5000枚刷った主役パトリック・スウェイジのポスターはたちまち売り切れた。

 セクシーなダンスのインストラクターを演じるスウェイジ本人は、まだ普通の映画館でこの映画を見ていない。理由は簡単だ。「一度ハリウッドの映画館で見ようとしたら、大変な騒ぎになった。とにかくあわててその場を逃げ出したんだ」

 ファンの異常な興奮ぶりは、スウェイジ夫妻の人生を変えてしまった。スウェイジの妻で女優のリサ・ネイミは言う。「夫を誰かに紹介したとするわ。女性なら、ぼうっと夢見心地で見つめるだけで、何もいえなくなるの。先日も慈善パーティーの席で、72歳になるおばあちゃんが言ってたわ。パトリックにひと目会えば、もう思い残すことはないって。映画は18回も見たそうよ」

 今年35歳のスウェイジは、バレエ団に所属していたこともあり、ソ連出身の偉大なダンサーたちの下で修行を積んだ。スウェイジは社交界の作法こそ身につけていないが肉体的には優雅そのものの、キャッスルという青年の役を演じる。彼にはうってつけの役柄と言っていい。キャッスルは、過保護なユダヤ系の家庭に育ったキュートな女の子ベイビー(ジェニファー・グレイ)に、ダンスとセックスの二重の喜びを教え込む。

バレエで会得した女性の引き立て方

 ポーラ・Rによれば、現代の多くの女性にとって「キャッスルみたいに官能的な男は強烈な衝撃なの。それまでに経験した男性とあまりにも違うので、どうしようもなく引かれてしまう」そうだ。ロサンゼルスでフリーライター兼小説家として活躍中のイブ・バビッツは、この映画を30〜40回は見たと言う。彼女はちょっと大胆に、こう言い切る。「これは女性のために作られた初のポルノ映画なのよ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中