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ビッグスリー
転落の構図
デトロイトを泥沼に陥れた
20年間の勘違い戦略
ビッグスリーはもう要らない
競争力があり労組にも縛られない第2の自動車産業が、活力を失ったデトロイトの自動車産業に取って代わる
ケンタッキー州中部の町ジョージタウンはかつて、二つの特産物で知られていた。バーボンウイスキーと馬だ。1789年、バプテスト派の牧師イライジャ・クレイグが初めてバーボンを蒸留したのがこのあたりといわれている。町を取り囲む牧場では、サラブレッドがブルーグラスを食み、速足で駆け抜けていく。
だがその町がこの20年で、別の種類の「馬力」によって静かな田舎町から活気に沸く郊外都市に変貌した。その力の正体は、カムリやアバロンやソラーラ。トヨタ自動車が生産する自動車だ。
税制優遇など州の誘致が実り、トヨタがここに巨大な生産工場を完成させたのは88年。以降、田園風景は一変した。
トヨタは広さ5.3平方キロの工場に53億ドルの投資を行い、今ではざっと1分に1台車を生産するまでになった。ジョージタウンの人口は倍増し、かつてタバコを栽培していた畑や牛を飼っていた牧場には豪邸やアパート、マンションなどが立ち並ぶ。工場のそばには、7000人の従業員の消費需要をねらう大規模ショッピングセンターも造られている。
「トヨタ誘致のために州が行った投資は何倍にもなって報われた」と、ケンタッキー州上院議員のデーモン・セイヤーは言う。
もちろんジョージタウンの工場も、デトロイトのビッグスリー(米自動車大手3社)を破綻のふちに追い込んだ市場環境の悪化と無縁ではない。最近は派遣労働者250人に一時帰休を申し渡したし、減産も強化している。
それでも、塗装部門のチームリーダーを務めるブライアン・ハワード(42)に不満はない。賃金は高いし、医療保険の保険料も家族で月74ドルと安い。「会社は何年も前から、いざというときのそなえはあると言ってきた」と、彼は言う。「今がそのときだが、ビッグスリーと比べればよくやっている」