コラム

トランプ&米共和党、「捕まえて殺す」流儀への謎の執着で自滅を繰り返す

2024年05月25日(土)20時15分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
アメリカ, ドナルド・トランプ, マイク・ジョンソン, マージョリー・テイラー・グリーン, ジョー・バイデン, クリスティ・ノーム, 米議会, 共和党, 米共和党

©2024 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<不倫スキャンダルから下院議長、法案、子犬に至るまで、トランプ前大統領と仲間たちの「キャッチ・アンド・キル」式解決法は裏目に出てばかり......(芸人パックンの風刺画コラム)>

Catch and kill!(捕まえて殺す!)なんて、狩人が動物に対してやることを指しそうな表現だが、そうではない。これは政治家など権力者の息のかかったタブロイド紙などがproblematic(問題となるような)事柄の情報源に取材と称して接触し、お金を払って独占契約を結んだ末にその情報を一切報じず握りつぶすことだ。

タブロイド紙National Enquirer(ナショナル・エンクワイアラー)の元CEOが2016年の米大統領選前、当時盟友だったドナルド・トランプ候補の不倫などの情報をキャッチ・アンド・キルしたと、裁判で証言したことが注目されている。皮肉にもこの証言で殺したかった醜い話題が蘇生してしまったわけだ。

ほかにも共和党のさまざまな行動にこのcatch and killを当てはめて、風刺画は遊んでいる。まずは、保守強硬派で知られるMTGことマージョリー・テイラー・グリーン下院議員が、同じ共和党のマイク・ジョンソン下院議長を解任させようとした案件。面白いことに、同じ共和党の多くの議員から阻止され失敗に終わり、共和党内の不協和音が浮き彫りになった。

次は不法移民問題だ。民主・共和両党で周到に交渉を重ね、共和党待望の国境管理強化を盛り込んだ超党派の法案の可決寸前に、トランプが反対を表明し可決を阻止。この問題が解決したら、政敵のバイデン大統領にプラスになるから反対したようだ。つまり、国の問題を解決することが問題だと、利己的な判断をした。だからキャッチ・アンド・キルで解決を阻止することが問題解決だと......もう訳分からないね。

最後は誰にも阻止されずに成し遂げた例。サウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事が飼っていた子犬の猟犬、クリケットちゃんは、興奮して走り回り狩りを台無しにした挙げ句、地元の農家の鶏を数羽殺してしまった。だからノームはクリケットを捕らえて射殺。文字どおりにキャッチ・アンド・キルした。はい、狩人が動物に対してやることを指す表現でもあるのだ。たまにね。

もうあり得ないが、この話が出てくるまで彼女はトランプの副大統領候補として有力視されていた。しかし本来封じ込めたいはずのこの情報を、本人は新発売の自伝で自ら暴露してしまった。捕まえて殺すのではなく、解き放って自殺した感じだね。


ポイント

THE REPUBLICAN SOLUTION...
共和党式の解決法...

PROBLEMATIC SEX SCANDAL?
問題のあるセックス・スキャンダル?

TRUMP IS AWESOME!
トランプは素晴らしい!

PROBLEMATIC SPEAKER?
問題のある議長?

PROBLEMATIC WIN FOR BIDEN?
(共和党にとって)問題となるバイデンの勝利?

BIPARTISAN BORDER BILL
超党派の国境法案

PROBLEMATIC PUPPY?
問題のある子犬?

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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