コラム

キャッシュに釣られてNFLとコラボしたJay-Zの裏切り(パックン)

2019年09月07日(土)14時45分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

Did Jay-Z Sell Out? / (c)2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<黒人の社会的平等を訴えて片膝を立てて抗議した稀代のQBキャパニックはアメフトから干されたままなのに......>

FL(全米プロフットボールリーグ)のサンフランシスコ49ersで最高のクオーターバック(QB)と言ったら、ジョー・モンタナかスティーブ・ヤングを挙げる人が多い。だが、彼らよりインパクトの大きなレジェンドがいる。それがコリン・キャパニックだ。

俊足で剛腕、格別の身体能力を持ち、2012年シーズン途中に負傷したQBの交代でスタメン入り。多数の記録を打ち立てチームをスーパーボウル(アメフトの王者決定戦)に導いた。そんな輝かしい逸材は今......暇!

16年、丸腰の黒人男性が白人警官に殺される事件が相次ぐなか、キャパニックは黒人の社会的平等を訴える啓発活動を始めた。活動といっても、動かないことだったけど。試合前の国歌斉唱で選手や観客が起立するとき、彼は片膝を突くようにした。そう。不公平な社会に対して立ち上がるために、しゃがんだのだ。

これはドナルド・トランプ米大統領やFOXニュースのコメンテーターをはじめ多くの保守派白人から批判され、ファンの間でも賛否両論だった。結局、17年3月にフリーエージェントを宣言したキャパニックは49ersからもほかのチームからもオファーを受けず、事実上干されてしまった。だから、暇かどうかは分からないが、少なくとも今はアメフトをやっていない。

だが、キャパニックは黒人やリベラルな国民の間ではヒーローとなり、彼を応援するために一般人も有名人も団結した。その1人が超大物ビリオネアのラッパーで起業家(そしてビヨンセの夫)のJay-Z。彼はキャパニックのジャージーを着て生放送に出たり、歌詞でNFLをディスったり、スーパーボウルのハーフタイムショーのボイコットを呼び掛けたりして抗議した。

普通なら反撃するはずのNFLだが、さすが器が大きい。先日、過去のことを水に流し(Let bygones be bygones)、Jay-Zとのコラボレーションを発表した。彼はハーフタイムショーの演出もやるようだ!

風刺画ではJay-ZもIt's mighty white of the NFL(NFLはなんて寛大だ)と感心している。これは「他人種より白人はフェアで道徳的」という差別的概念に基づく表現で、普段は皮肉でしか使わない。でも白人至上主義団体KKKを象徴する白いフードのような袋いっぱいのNFLキャッシュを抱えたJay-Zは普通にうっとりした様子。後ろで膝を突き、干されたままのキャパニックはExcuse me(なんだと!?)と異議を唱えている。

Jay-Zに裏切られた気持ちは理解できる。彼がビヨンセと結婚したときは、僕もそんな感じだった。

<本誌2019年9月10日号掲載>

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※9月10日号(9月3日発売)は、「プーチン2020」特集。領土問題で日本をあしらうプーチン。来年に迫った米大統領選にも「アジトプロップ」作戦を仕掛けようとしている。「プーチン永久政権」の次なる標的と世界戦略は? プーチンvs.アメリカの最前線を追う。


プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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