コラム

アイオワ州で圧勝、候補指名獲得の確率は80%? 大統領選「独走」のトランプが唯一、恐れる存在とは?

2024年01月18日(木)18時38分
ドナルド・トランプの大統領選

CHENEY ORR–REUTERS

<米共和党の大統領候補指名レースにおける初戦のアイオワ州で圧勝したトランプ前大統領だが、本当の敵はヘイリーやデサンティスではない?>

各種世論調査を見る限り、米共和党の大統領候補指名レースは完全にトランプ前大統領の独走状態だ。レースの開幕を告げる党員集会が1月15日に行われるアイオワ州では、直前の世論調査で2位の座を争うニッキー・ヘイリー元国連大使とフロリダ州知事ロン・デサンティスに30ポイント以上の大差をつけている(編集部注:アイオワ州党員集会でトランプは得票率51.0%の圧勝を収めた)。

唯一トランプの候補指名獲得を阻む者がいるとすれば、選挙で選ばれていない9人の判事だけだ。連邦最高裁判所はトランプの予備選立候補資格を剝奪したコロラド州最高裁の決定について審理入りを決定。2月8日に口頭弁論を実施する。

トランプが2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃(米政府に対する反乱だ)に関与したとしても、次の大統領になる資格があるのかどうか──この点を判断するため、時間的余裕がないなかで口頭弁論の開催を決めた最高裁の対応は、選挙戦が本格的化する前に少なくとも問題解決の糸口を示すことの重要性を示唆している。

「スーパーチューズデー」にどう影響する?

トランプの候補資格を否定したコロラド州最高裁が法的根拠としたのは、南北戦争後に南軍出身の元将軍を公職に就かせない目的で導入された憲法修正第14条3項だ。これについての連邦最高裁の判断は、全米に適用される憲法解釈の決定打となる。

コロラド州共和党は同州予備選が行われる3月5日以前に結論を出すよう求めている。この日は多くの州で予備選や党員集会が開かれる「スーパーチューズデー」だ。メーン州の州務長官は既にトランプの予備選出馬を認めない決定を下した。マサチューセッツ州とイリノイ州でも、出馬資格の剝奪を求める動きが出ている。

この騒動は最高裁にとって最悪のタイミングで起きた。「財布も剣も」持たない司法の力の源泉は、その威信と国民の信頼にあるとよく言われる。だが19年以降は保守化が進み、道徳的スキャンダルが相次いだことで、国民の支持は20%も低下した。

もし最高裁がトランプに不利な裁定を下すか、口頭弁論でコロラド州の決定に理解を示す表現が飛び出したりすれば、ヘイリー大逆転の芽が出てくる。トランプの大統領職に就く資格に疑問符が付けば、バイデン現大統領との直接対決ではヘイリーのほうが勝算が高いとする世論調査の結果と相まって、トランプ指名確実の流れは一変するだろう。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ポーランド鉄道爆破、関与の2人はロシア情報機関と協

ワールド

米、極端な寒波襲来なら電力不足に陥る恐れ データセ

ビジネス

英金利、「かなり早期に」中立水準に下げるべき=ディ

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story