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ウクライナ戦争1年、西側メディアが伝えない「それでもロシアが戦争をやめない訳」
国民は政府の強権化も支持
私がこうした「プーチン主義」の発想を明確に認識したのは、あるリベラル派のロシア人と話したときだった。その人物によれば、リベラル派のロシア人も、ロシアが超大国ではないという考えは受け入れられず、反プーチン派も内心ではウクライナの敗北を望んでいる。ロシア人はほぼ全員、自国が特別な国であり、帝国のように振る舞う資格があると考えているというのだ。
しかし現実には、ロシア人の祖国への誇りを揺るがす事態が起きている。国境を接する隣国の中国は、GDPも人口もロシアの10倍、軍事予算は5倍に達する。しかも、欧米はロシアになんの相談もなく、ロシアの長年の同盟国であるセルビアに空爆を行い、ロシアの抗議をあざ笑うようにイラクをたたきのめした。
この状況では、筋金入りのリベラル派ですら、国際社会におけるロシアの地位向上を望まずにはいられない。その点、ウクライナとの戦いに勝てば、ロシアの強い意志と徹底した冷血さ、さらには常軌を逸したまでの非合理さを欧米に印象付けることができる。その上、ロシア国民はロシアが超大国の後継国なのだと確認できる。
私は当初、この人物がリップサービスでわざと過激なことを言ってみせたのだろうと思っていた。しかし、ロシアの大学の同僚の中でも最も頭脳明晰で、不思議な予測能力を持っている人物の言葉を聞いて、考えが変わった。
その人物いわく、プーチンはウクライナだけでなくモルドバものみ込むつもりでいて、その後はさらに東欧も支配下に置き、ヨーロッパに冷戦時代の「鉄のカーテン」を復活させようとしているというのだ。
この見解を聞いた私は、ロシア国内ではこうした動きを支持するムードが高まっているに違いないと思うようになった。もっと言えば、プーチンが権力を保ち続けるためには、そのような行動が不可欠な状況になっているのかもしれない。
国民の気持ちが欧米との戦いに向いているとすれば、絶対権力者の地位を維持したいプーチンは、NATOをポーランドやリトアニアより西に追い払い、旧ソ連時代の影響力圏を取り戻さなくてはならない。
欧米メディアはいまだに、ウクライナ戦争に関してプーチンの誤算とロシア軍の失態ばかりを報じている。しかし、ロシア国内でのプーチンの支配力が開戦前よりむしろ強まっていることは間違いない。
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