コラム

分裂深める米民主党に、国政奪還の可能性は見えてこない

2025年05月14日(水)14時50分

問題は、果たしてこうした党内対立が、民主党の党勢挽回に意味があるのかということです。

ニューヨーク市の若者が、現政権の政策とは真逆である、社会主義でイスラム教徒のマンダニ氏に引き寄せられる気持ちは分からないではありません。またバラカ市長が、移民取り締まりに憤慨して体当たりをすることで、票が稼げると思う心理にも合理性はあります。一方で、クオモ氏やシェリル氏が、壊れてしまった国際分業や自由社会の結束を修復したいというのも理解できます。

ですが、このようなエリートでグローバリストの穏健派と、やや極端な左派という対立構図を抱えていては、そこでどんなに活気ある党内論戦ができたとしても、国政への展望は見えてきません。


ラストベルトの有権者には全く心に響かない

2024年の選挙において、民主党が完敗したのは、いわゆる「ラストベルト」、つまり20世紀に繁栄した製造業が衰退して経済的に苦境に立っている五大湖地方で「全敗」したからです。この票田から見れば、グローバリズムを前提にアメリカが知的産業中心の先進国であってよいという民主党穏健派も、マイノリティーを擁護しつつ都市の困窮者への再分配ばかりを主張する民主党左派も、全く心には響かないのです。

民主党が2026年、そして2028年へ向けて逆転劇を演じていくには、どう考えても「汗と土の匂い」がして、衰退する地方への理解をする政治姿勢を打ち立てていかねばなりません。高度に知的な職種だけが高収入を満喫し、「知的なるものに縁の薄い」層には「学び直しを強いる」か、「サービス業の現場で消費者に奉仕せよ」ということでは、2024年と同様の反発が返ってくるだけです。また、彼らの価値観を全て否定する態度は、その反発を強めるだけです。

2025年のニューヨーク市長選、ニュージャージー州知事選では、余程のことがない限り民主党が勝利すると思います。そうではあるのですが、極左候補が予備選で敗退しつつ、それなりの存在感をアピールし、本選に出ていくのはクリントン=オバマ路線の穏健派で、彼らが予想通り勝つというシナリオでは、国政奪還の可能性は明確には見えてこないと思います。

【関連記事】
米国債デフォルトに怯えるトランプ......日本は交渉カードに使えばいい
迷惑系外国人インフルエンサー、その根底にある見過ごせない人種差別

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ノーベル賞逃し軌道修正 「もう平和だけ

ワールド

イラン、インターネット遮断解除検討か 国営TVハッ

ワールド

米の脅迫に屈さず、仏独財務相 反威圧措置も選択肢に

ワールド

高市首相23日解散表明、投開票2月8日 与党過半数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 2
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 5
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生…
  • 6
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 9
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 10
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 7
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story