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分裂深める米民主党に、国政奪還の可能性は見えてこない
問題は、果たしてこうした党内対立が、民主党の党勢挽回に意味があるのかということです。
ニューヨーク市の若者が、現政権の政策とは真逆である、社会主義でイスラム教徒のマンダニ氏に引き寄せられる気持ちは分からないではありません。またバラカ市長が、移民取り締まりに憤慨して体当たりをすることで、票が稼げると思う心理にも合理性はあります。一方で、クオモ氏やシェリル氏が、壊れてしまった国際分業や自由社会の結束を修復したいというのも理解できます。
ですが、このようなエリートでグローバリストの穏健派と、やや極端な左派という対立構図を抱えていては、そこでどんなに活気ある党内論戦ができたとしても、国政への展望は見えてきません。
ラストベルトの有権者には全く心に響かない
2024年の選挙において、民主党が完敗したのは、いわゆる「ラストベルト」、つまり20世紀に繁栄した製造業が衰退して経済的に苦境に立っている五大湖地方で「全敗」したからです。この票田から見れば、グローバリズムを前提にアメリカが知的産業中心の先進国であってよいという民主党穏健派も、マイノリティーを擁護しつつ都市の困窮者への再分配ばかりを主張する民主党左派も、全く心には響かないのです。
民主党が2026年、そして2028年へ向けて逆転劇を演じていくには、どう考えても「汗と土の匂い」がして、衰退する地方への理解をする政治姿勢を打ち立てていかねばなりません。高度に知的な職種だけが高収入を満喫し、「知的なるものに縁の薄い」層には「学び直しを強いる」か、「サービス業の現場で消費者に奉仕せよ」ということでは、2024年と同様の反発が返ってくるだけです。また、彼らの価値観を全て否定する態度は、その反発を強めるだけです。
2025年のニューヨーク市長選、ニュージャージー州知事選では、余程のことがない限り民主党が勝利すると思います。そうではあるのですが、極左候補が予備選で敗退しつつ、それなりの存在感をアピールし、本選に出ていくのはクリントン=オバマ路線の穏健派で、彼らが予想通り勝つというシナリオでは、国政奪還の可能性は明確には見えてこないと思います。
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