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米国債、ムーディーズが最上位から格下げ ホワイトハウスは批判

2025年05月17日(土)09時40分

格付け会社ムーディーズは16日、米国の格付けを最高位の「AAA」から「AA1」に格下げした。(2025年 ロイター/Mike Segar)

[16日 ロイター] - 格付け会社ムーディーズ・レーティングスは16日、膨らみ続ける36兆ドルの債務の持続性に懸念があるとして、米国債の格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に引き下げた。見通しは「安定的」とした。

ムーディーズは主要格付け3社の中で最後まで最上位の「Aaa」を維持していたが、米国の財政赤字の拡大と利払いの増加を理由に2023年後半に見通しを引き下げていた。

ムーディーズは「歴代の米政権と議会は、年間の巨額財政赤字と金利コスト増大の傾向を逆転させる措置で合意できていない」と指摘した。

トランプ大統領の経済アドバイザーを務めた保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のスティーブン・ムーア氏はロイターの取材に「言語道断」とコメントした。「米政府が裏付けする国債がトリプルAでないとしたら、何がトリプルAなのか」と語った。

ホワイトハウスのスティーブン・チャン広報部長はソーシャルメディアに投稿し、ムーディーズのエコノミストのマーク・ザンディ氏を批判。トランプ大統領の政敵だとした上で、「彼の『分析』を真に受ける者はいない。彼は何度も間違っていることが証明されている」とした。

ロイターは財務省にコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。

この日はトランプ大統領が推進する包括的な税制法案が下院予算委員会で採決されたが、21人の共和党議員のうち5人が反対票を投じ、重要な手続き上の障壁を乗り越えることができなかった。

ムーディーズは、現在検討されている財政案によって義務的な歳出が複数年にわたり大幅に削減されるとは考えにくいとし、米国の財政状況は過去と比較して、また他の高格付け国と比較しても悪化する可能性が高いとの見方を示した。

連邦政府の債務負担の対国内総生産(GDP)比は24年の98%から35年までに約134%に上昇すると予測した。

民主党上院のチャック・シューマー院内総務は「ムーディーズの米国債格下げは、トランプ大統領と議会共和党に対し、財政赤字を拡大させる税制優遇策の無謀な追求をやめるよう警鐘を鳴らすもの」とする声明を出した。「残念ながら、期待はしていない」とした。

ムーディーズによる格下げは、フィッチ・レーティングに続くもの。フィッチは23年8月、財政悪化が予想されること、政府の支払い能力を脅かす債務上限交渉が繰り返されていることを理由に、米国債の格付けを最上位から引き下げた。S&Pグローバル・レーティングは11年に引き下げている。

ボストンカレッジのブライアン・ベスーン教授(経済学)は、「彼ら(共和党の議員)は財政赤字を削減軌道に乗せるような、信頼できる予算合意をしなければならない」と話す。

ムーディーズの格下げを受け、終盤の債券市場で米国債は利回りが上昇した。ミシュラー・ファイナンシャルのマネージング・ディレクター、トム・ディ・ガロマ氏は、格下げのタイミングを予期していなかったとした。

ロイター
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