コラム

就任1年のバイデン政権、直面する5つの難題

2022年01月19日(水)15時30分

民主党内の造反で補正予算も通せない事態に Kevin Lamarque-REUTERS

<インフレ、外交、党内不和、共和党攻勢、パンデミックと、バイデンはいずれも困難な問題に手こずり支持率は危険水域に>

1月20日で、就任1周年を迎えるバイデン政権ですが、支持率の低下に苦しんでいます。就任当初は55.7%だった支持率が、1年後の現在は42.0%まで下がりました。これに対して不支持が52.1%ということですから、かなり危険水域に入ったと言えます。

これを4年前のトランプと比較すると、トランプの場合は、就任時43.8%だった支持率が1年後には40.1%に下がった「だけ」ですから、バイデンの場合の下がり方が激しいのが分かります。(いずれも、政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」の全国平均値)しかもバイデンの場合、低落傾向に歯止めがかかっていません。

問題はたくさんあるのですが、5つに整理してみたいと思います。

まず第1に、現時点で、非常に問題になっているのはインフレです。例えば、昨年の12月には前年比の物価上昇が「7%台」という40年ぶりの数字になりました。原因としては、米国と中国におけるロックダウン解除による消費爆発、原油高、人手不足、物流の混乱という複合的な理由ですが、バイデン政権はこの問題に臨機応変に対処できているという印象はなく、むしろ不満が大統領に向かっている状況です。

外交成果も出せていない

2番目は、外交です。ウクライナを中心としたロシアの陽動作戦にも、対中国のパワーバランス維持にしても、西側同盟の再構築にしても、ミャンマー問題についても、目立った成果をアピールすることはできていません。一方で、21年8月のアフガン撤退に伴う混乱については、バイデン政権の不手際という印象が残ってしまい、これを上書きするような成果を出せていません。

3番目は、民主党内のゴタゴタです。上院が50対50で拮抗する中で、党内右派の議員の造反により補正予算が通せなくなるなど、当初の政権プランが実行できなくなっています。また、大統領以上にハリス副大統領の求心力が低下しており、このままでは2024年の大統領選へ向けて現職もしくは禅譲での一本化は不可能、予備選の泥試合の再現という可能性が出てきています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国財政相会見、刺激策の「規模」不明 市場の期待は

ビジネス

情報BOX:中国、景気底上げへ積極財政出動 財政相

ビジネス

中国9月CPI減速、PPIは半年ぶり下落率 デフレ

ワールド

イスラエル、イラン攻撃目標を軍・エネ施設に絞り込み
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリメント「3つの神話」の噓を暴く
  • 2
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパートに行って「ある作品」を作っていた
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 5
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 6
    迫るロシア軍からドネツク州ポクロフスク近郊で、大…
  • 7
    冷たすぎる受け答えに取材者も困惑...アン・ハサウェ…
  • 8
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思…
  • 9
    メーガン妃とヘンリー王子は「別々に活動」?...久し…
  • 10
    アルツハイマー病治療に新たな可能性...抗がん剤投与…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 3
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 4
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 6
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 7
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 8
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 9
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 10
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 8
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story