コラム

教育現場にケンカを売るトランプ、その目的は?

2020年07月09日(木)15時30分

この2つの「教育現場への攻撃」ですが、もちろん大統領選を意識した行動なのは間違いないでしょう。民主党の牙城である教育現場や教職員組合に対してケンカを売り、相手が批判してくれば「学校を開けたくないのは仕事をサボるため」だとか「子供の教育を停滞させる」として叩こうというのだと思います。

大学に対する攻撃も、「アメリカの大学はアメリカ人のため」だとか「これを機会に、留学生に依存した経営を改めてもらう」などといったメッセージを出して、各大学がこれに反発するように仕向けるでしょう。そして、最終的にはコア支持者を焚き付けて「名門大学は反米的、それを叩く大統領は偉い」とか「留学生に味方するバイデンは反米」などといった「いつもの対立」を煽る計算だと思います。

ですが、仮にそのような意図があるとして、計算通りに行くかどうかは分からないと思います。

まず、教育現場が学校の再開に慎重だったり、厳格なガイドラインに即して運営をしようという姿勢について、それを叩けば保護者層が喜ぶと思っているのであれば、それはあまりに短絡的です。

何故かというと、コロナ危機という「前代未聞の見えない敵」に対して、何よりも保護者は子どもや家族の健康について神経を尖らせているからです。学習の遅れはもちろん気になっているでしょう。だからといって学校の慎重姿勢を叩けば親が支持してくれる、そんな計算をしているのなら、トランプにはめずらしい勘違いのように思います。

また大学における留学生排斥ですが、これは各大学とその関係者を敵に回すだけでなく、コロナ後へ向けた人材確保を考えている経済界も困るはずです。

今回のトランプの「教育現場叩き」は、コロナ感染拡大を止められないなかで、トランプとして打つ手が限られてきている、そんな印象が拭えないのです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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