コラム

大富豪ブルームバーグが、民主党予備選を勝ち抜く可能性は?

2020年02月18日(火)16時40分

では、そのブルームバーグが、民主党予備選を勝ち抜く可能性はあるのでしょうか? あるとすれば、政治的な立場の近い中道派の、ブティジェッジ、クロブチャー、バイデンの3人が結束してブルームバーグを推す、そこにバラク・オバマ夫妻や民主党の上下両院議員たちが加わって、挙党態勢となるケースです。

ただし、そのような中道派の挙党態勢が組めるのであれば、ブルームバーグはむしろ政治資金を提供する裏方に回って、クロブチャーもしくはブティジェッジといった若い候補を前面に立てた方が、政権奪還の可能性は上がるという考え方もあり、そのような中道一本化への期待論はすでにあちこちで聞かれます。

一方で、左派のサンダース候補は、こうした動きを警戒しています。政治集会では、繰り返し「候補の座をカネで買うのは許さない」としてブルームバーグを激しく批判しています。格差批判を政治的モメンタムの核に据えているサンダース派としては、大富豪であり、ウォール街の象徴でもあるブルームバーグは敵の中の敵だからです。

そんな中で、一般のメディアでもブルームバーグに対する批判的な報道が目立って来ました。市長時代に「ストップ・アンド・フリスク」つまりニューヨーク市警察による有色人種を中心とした一方的な職務質問と身体チェックを擁護していた発言が繰り返し流されて、「ブルームバーグは人種主義者」という論争が起きたのはその一例です。

またこの週末には、「副大統領候補にヒラリー・クリントンを招聘する」という噂が流れましたが、これには若者たちから一斉に反発が上がっています。富豪イメージに加えて、バイデンやヒラリー・クリントンといった「旧世代」に対して、ミレニアル世代には強い抵抗感があるわけで、噂の真偽はともかく、この噂に関しては、ブルームバーグの評価を下げる作用が出ているようです。

そう考えると、ブルームバーグでは政治的な左派と中道で分裂し、さらには世代間の対立を抱えた民主党のシンボルになるのは難しそうです。もっと若い世代による中道候補の一本化ができるかできないか、そこがスーパー・チューズデーに向かう民主党の主要なテーマになるわけで、その場合、ブルームバーグは裏方に回るのが得策と思われます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story