コラム

バノン抜きのトランプ政権はどこに向かう?

2017年08月22日(火)17時00分

今回の演説から分かることは、バノン更迭をもって大統領は、共和党の中道穏健派路線に「屈服した」と同時に、それでも「コア支持層」の離反を恐れて「NATOに費用負担を」とか「パキスタンには疑念」といった「コワモテ」のキャラは維持する、そんな妥協的な姿勢を取り始めたということです。

一方の共和党主流派としては、極右を擁護した大統領の暴言が、自分たちの支持者の怒りを買っていること、大統領の資質には大きな疑問が付いたことをベースとして、今回の「バノン抜きのトランプ」に対して、「最後のチャンス」を与えているという感覚があるのだと思います。

これで結局のところ大統領の暴言癖や、極端なイデオロギー的判断が改善しなければ、また別の局面が来るのでしょうが、とりあえず今の時点で大統領に辞任を迫ったり、議会共和党が弾劾罷免に流れることは「ない」ということなのでしょう。

そのような折衷主義的な動きをしていく中で、株価や景気の暗転は避けられるのか、大統領の支持率が下げ止まることはあるのか、議会との駆け引き、とりわけ予算を通すための「債務上限問題」などで合意ができるのか、この秋の政局は目が離せません。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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