コラム

トランプはなぜメディアを敵視し、叩き続けるのか?

2017年02月21日(火)15時45分

フロリダの演説会場で大統領専用機をバックに登壇したトランプ夫妻 Kevin Lamarque-REUTERS

<まるで選挙期間中のようにラリーで演説を行うトランプ。そこにはメディアを「敵」に仕立ててトランプ劇場を続けざるを得ない事情が>

先週以降、トランプ政権の周辺は大荒れになっています。マイケル・フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)が13日に辞任し、その後大統領自身が単独記者会見に臨んだものの、メディアとの確執がエスカレートするばかりの結果に終わりました。

先週末は「プレジデント・デイ」という国民の祝日で、多くの職場や学校は3連休になりました。そこで、というわけかどうかは分かりませんが、トランプ大統領はこの週末もフロリダ州の「マー・ラーゴ」リゾートで過ごしました。

この、週末ごとのフロリダ滞在は、移動の費用をはじめ、警備の費用もバカにならないようで、これまでの3回の合計が1000万ドル(約11億3000万円)という莫大な経費がかかっていることから大きな批判を浴びています。そんな中、今週は「大統領がゴルフをしたかどうかは秘密」というコメントがありました。ホワイトハウスとしては、何とか批判を沈静化したいようです。

安倍首相の訪米は、この「政権が一気に批判にさらされる」前に行われたことで、極めてラッキーであると共に、はるか昔のような感覚さえあります。

批判を沈静化したい政権側は、ここで奇抜な策に出ました。トランプ大統領は、まるで2015年~16年のような「選挙戦」を再開したのです。

【参考記事】トランプ「メディアは国民の敵」、独裁につながる=マケイン議員ら

まず先週17日の金曜日、大統領はサウスカロライナ州のノースチャールストンにあるボーイング社の工場を訪れ、それこそ選挙戦のような演説を行いました。「自分はアメリカの雇用を最優先にすると約束して当選した。だから国内雇用を改善する。工場を海外に移転したら罰する」などと威勢よくブチ上げたのです。

また19日の日曜には、フロリダ州のメルボルンという大西洋岸の街に登場して演説会を開催しました。場所はオーランド=メルボルン空港という地方空港で、そこの格納庫を借り切って大勢の支持者を集め、その横の格納庫の大扉は開けておいて、そこに「エアフォースワン」を駐機させるという趣向でした。

昨年の選挙戦の時は「TRUMP」というロゴを派手にペイントしたボーイング757でしたが、大統領になって「専用機」にアップグレードしたというわけです。ですが、演説のスタイルは昨年と同様で、全くのアドリブ、しかも一方的にメディアを攻撃する「コア支持者だけ」を対象としたものでした。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豪GDP、第3四半期は前年比2年ぶり大幅伸び 前期

ワールド

「非常戒厳」宣言から1年、韓国李大統領「加害者は法

ワールド

イタリア、ウクライナ軍事援助に関する法令の承認延期

ワールド

韓国、日中関係悪化巡りどちらの側にも立たず=李大統
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story