コラム

「トランプ政権下」の日米関係をどう考えるか?

2016年09月29日(木)17時00分

 1つは大統領に就任後も、対中強硬姿勢を強める可能性です。その場合、日米同盟はこれまで以上に重視されるでしょう。では、オバマと同じように、日米が蜜月になるかというと、そうとは限りません。何しろ、トランプに代表されるような「アメリカを優先しないと許さないぞ」という「オルタナ右翼」が国内にいて、ヒラリーの「失態」に睨みを利かせている中では、「大統領としての広島訪問」などは難しそうだからです。

 また、現職閣僚の靖国参拝や、枢軸日本への肯定論のようなものも、オバマ時代のように「国内向けのパフォーマンスで、国際的には人畜無害」だという許容はしてくれないでしょう。中国との確執が強まるのであれば、アメリカの足を引っ張り、相手の増長に口実を与えるからです。

 もう一つには、ヒラリーが大統領になった途端、過去の経緯を水に流して「親中ヒラリー」に変身する可能性もゼロではありません。その場合は、日本もうまく立ち回れば、東シナ海の緊張をトーンダウンさせることも可能になるかもしれません。

 ですが、そうなった場合、アメリカは「中国の不良債権問題」、つまり陳腐化した生産設備など巨額な「目に見えない債務」リスクについて、厳しい目を光らせることを止め、破綻を先延ばしして本質的な解決とソフトランディングから逃げる危険性があります。中国を「甘やかしすぎる」ことで大破綻を招くようなリスクもあり得ます。

【参考記事】トランプ当選の可能性はもうゼロではない

 これに対しては、日本は警戒しなければならないと思います。その場合、世界中が金融緩和に流れる中で、どこかのタイミングで、米欧に先んじて日本が財政規律重視にシフトするなどのサバイバル策を考える必要も出てくるかもしれません。

 これに加えてヒラリーの場合は、中東への「関与」を「成功させる」野心が見え隠れしています。イランの無害化、クルド系の地位向上、トルコとロシアへの牽制、シリアのアサド政権打倒、ハマスの無害化とイスラエル=パレスチナ和平の仕切り直し、タリバンの無害化工作、アフリカの過激派掃討といった問題について、オバマがやらなかった「介入」をヒラリーは進めるかもしれません。

 そうした問題が提起された場合、日本は果たしてどのような方針を取るのか。イラク戦争のように「後に苦い後悔をする」ような事態は避けなければなりません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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