最新記事
映画

18分で世界が終わる――アカデミー賞監督が描く核攻撃の恐怖と沈黙の代償

A CALL TO ACTION

2025年11月6日(木)10時18分
H ・アラン・スコット
18分で世界が終わる――アカデミー賞監督が描く核攻撃の恐怖と沈黙の代償

社会派のビグロー監督が『ハウス・オブ・ダイナ マイト』で描くのは、完璧なシステムの中核にいる不完全な人間だ ALEXI LUBOMIRSKI/NETFLIX FOR NEWSWEEK

<キャスリン・ビグロー監督が緻密に描く核攻撃映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』は「抑止のための核保有」の危うさを存分に見せつける>

核兵器の最も深刻な脅威は、核弾頭のすさまじい破壊力ではない。私たちが社会全体として、それに沈黙するようになったことだ。

冷戦時代には人類滅亡のシナリオが現実味を帯びていたが、今や世界はそれを完全に忘れ去ったかのようだ。アカデミー賞受賞監督のキャスリン・ビグローは、この危険な文化的健忘症が人々の耳を塞いでいると感じている。

最新作『ハウス・オブ・ダイナマイト』(劇場公開中、ネットフリックス配信中)を世に放ったのは、もう一度人々に耳を澄ましてもらうためだ。

世の中の関心が薄れたのは核兵器の存在が「常態化」したからではないかと、ビグローは言う。

「そのこと自体が非常に怖い。世界が壊滅しかねないのに、人々はその脅威を見据えようとしない。大半の人はあまり深刻に考えていないようだ」

『ハウス・オブ・ダイナマイト』は圧倒的な熱量の政治スリラーだ。政府と軍の高官を演じるのはイドリス・エルバ、レベッカ・ファーガソン、トレイシー・レッツら。彼らは核ミサイルが飛来する現実に、リアルタイムで立ち向かう。

出所不明のICBM(大陸間弾道ミサイル)が北米を目指して刻々と進む18分間、政府と軍の諸機関が慌ただしく対応を迫られる。映画はこの18分間の息詰まる展開を、3つの異なる視点から描き出す。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ自動車生産、11月は前年比11%増 国内向け好

ワールド

英労働市場、求人減少も賃金上昇 中銀にジレンマ

ワールド

スイスの薬価上昇へ、米政権と製薬各社の引き下げ合意

ワールド

ロシア黒海沿岸でウクライナのドローン攻撃、船舶2隻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中