コラム

「トランプ降ろし」の仰天秘策も吹き飛ぶ、ルビオとクルーズのつばぜりあい

2016年02月25日(木)16時00分

 この合計223人の代議員を「トランプに渡さない」ことに成功すれば、トランプは「1位だが過半数ではない」ということになり、見事に「ブローカー・コンベンション」が成立し「フロア・ファイト」という「談合」に持ち込めるというのです。

 NBCのベテラン政治記者チャック・トッドは、カリフォルニアを取るだけの目的でミット・ロムニー前大統領候補を担ぐ動きもあると指摘していますが、トッドのような「ビッグネーム」が言い始めているというのですから、あながち根拠のない話ではなさそうです。

 ところが、これには異論もあります。仮に「フロア・ファイト」となった場合、現在の勢いからすると「2位のルビオ」と「3位のクルーズ」を、どちらかに一本化しなくてはなりません。ですが、この一本化が政治的に不可能だというのです。

 これはワシントン・ポスト紙のジム・タンカーズリー記者が指摘しているのですが、「ルビオはクルーズが大統領になるのは困る」「クルーズはルビオが大統領になるのは困る」という強い政治的な「利害」対立を持っているというのです。というのは、2人は共に44歳(ルビオ)、45歳(クルーズ)と若いところがミソで、仮に今回がダメでも「将来大統領になるチャンスがある」と考えているに違いないからです。

【参考記事】「ブッシュ王朝」を拒否した米世論2つの感情

 例えば、クルーズの側から見ると、仮に今回ルビオが大統領になってしまうと、8年やって退任する場合には、その副大統領が有力な後継者になる可能性があります。そうなると12年とか16年待たされる危険が出てきます。

 では、クルーズがルビオの副大統領になればいいかというと、その場合でも8年待って禅譲に期待するしかなくなります。それ以前の問題として、ルビオの副大統領候補にしてもらっても、今回負ければ、「自分も一緒に負けて」しまうことになり、ペイリンやライアンのような立ち位置に追いやられてしまいます。

 また、ルビオが4年やって再選で負けた場合、仮に自分が副大統領であれば、敗北の責任は自分も背負わされます。また2020年に民主党の若い実力者に政権を取られると、そこから4年後の相手の再選狙いの際にチャレンジャーになっても勝ち目は薄くなります。ルビオの側から見ても、この構図は全く一緒です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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