コラム

パリ連続テロ、分裂するアメリカのリアクション

2015年01月20日(火)12時30分

 この「ノー・ゴー・ゾーン」という言い方ですが、今週になって共和党から、2016年の大統領選にも色気を見せているボビー・ジンダル知事(ルイジアナ州)が何度も繰り返して発言していることが発覚して問題になっています。ジンダル知事は、「イギリスのバーミンガムは相当に問題のある都市だ」と言って、キャメロン首相に怒られたり、「そもそもイスラム教自体に問題がある」などと、攻撃的な発言を繰り返しているのです。

 ジンダル知事に関しては、余りに一方的な発言であるわけでCNNなどはかなり問題にしており、キャスターたちが知事に激しく食い下がる映像も放映されています。インド系の俊英として保守の星であったジンダル氏も、これで人気を失うだろうという見方が多い一方で、保守系の世論の中には「良く言った」的な評価がされているという報道もあります。

 つまり、2000年代以来の「草の根保守」が抱いている「イスラム教嫌い」という感覚に加えて、「ヨーロッパのトラブルには一線を画する」というアメリカ建国以来の「孤立主義の伝統」を踏まえているというのです。

 イスラム世界との共存を志向してフランスのテロ事件に関しては平静な態度に努めているオバマ政権と主要メディアが「真ん中」にあり、これに対して『シャルリ・エブド』誌やフランスのデモへの連帯を表明しているのは「左派」の一部のみ、一方で「右派」はイスラム圏やフランスに対して孤立主義を復活させようとしている――。これがアメリカの現在のリアクションであり、良く言えばそのバリエーション自体が「多様性」であり、悪く言えば「分裂」しているとも言えます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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