- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- 黒人青年射殺事件「不起訴」の衝撃
黒人青年射殺事件「不起訴」の衝撃
今年8月の発生以来、深刻な人種間対立を招いていたミズーリ州ファーガソンの白人警官ダレン・ウィルソンによる黒人青年マイケル・ブラウン氏射殺事件について、アメリカ時間の11月24日夜、大陪審の審理が終了しウィルソンは不起訴となりました。
大陪審というのは、有罪無罪を決定する法廷ではなく、この事件に関する「起訴・不起訴」を決定するだけの審理です。それに3カ月も要したというのは、要するに陪審員の合意形成に難航したということなのだと思います。
基本的な構図としては、黒人住民の認識としては「武装していないブラウン氏をウィルソンが一方的に射殺した」として、「人種差別事件」だと猛抗議を続けているわけです。また市警察の側としては、ブラウン氏が暴力的な態度を取るなど、身の危険を感じた場合は「相手を無害化する護身措置」を取るのは警察官として当然であり、ミズーリ州法によれば犯罪を構成せず、従って逮捕拘束の措置もしなかったという立場です。
8月には大規模なデモが起きる中で、警官が1人の黒人を射殺するなど多くのトラブルが続きました。そうした流れを受けて、決定直前の時点では、暴動による商店などの襲撃を警戒して「銃を購入する動き」が活発化するなど極めて不穏な雰囲気が高まっていました。また暴動の激化を恐れて厳重な警備が敷かれる一方、周辺の学区では翌日の休校を決めています。
ブラウン氏の遺族は「起訴・不起訴の決定が発表されても、まず4分半の黙祷を行って、デモ活動はその後にしてほしい」と冷静な対応を呼びかけていました。さらにミズーリ州のジェイ・ニクソン知事(民主)は「とにかく人命を守りきろう」と呼びかけ、事態の深刻化に備えて教会などの「シェルター」を用意したと発表しつつ、同時に平静を呼びかけていました。
現地の警察は「デモは平和裡に徹底して保護する。だが、私有財産の損壊等は絶対に許さない」と声明を出しています。警備体制としては重武装の州兵が遠巻きに構える中で、軽武装の警察が前面に出て警備を行うという方式です。
一方のウィルソン警官ですが、完全に雲隠れし、警察の同僚女性と静かに結婚式を挙げたということです。市警察はウィルソンに関して「不起訴の場合は辞職して州外へ転居」という「対応」を考慮しているという報道もありました。
60年代学生運動『いちご白書』再び、ニューヨークのキャンパスが燃えている 2024.04.24
党議拘束の緩和こそ政治改革の決め手 2024.04.17
爆発的な観光資源となったアメリカの皆既日食フィーバー 2024.04.10
皆既日食で盛り上がるアメリカ 2024.04.03
大谷翔平の今後の課題は「英語とカネ」 2024.03.27
植田日銀の大規模緩和「出口戦略」は成功しているのか? 2024.03.20
『オッペンハイマー』日本配給を見送った老舗大手の問題 2024.03.13