コラム

アイビーリーグには「スーパー高校生」しか入れないのか

2014年07月31日(木)17時53分

(2)「一芸に秀でていなくてもいい」
 アメリカの名門大学は確かに「突出した才能」を歓迎します。日本人の場合でもハーバードが五嶋龍さん、コロンビアが宇多田ヒカルさんを合格させたように、プロの音楽家レベルの「一芸」を持っていれば大いに評価されるのは間違いありません。では、そうではない「凡人」には合格は望めないのかというと、そんなことはないのです。

 高校生活を通じて、基本的には「スポーツ+芸術系」の課外活動をコツコツ続ける、自分の専門になりそうなジャンルに関係のある機関でボランティアなど、実社会を知る経験を深める、こうした活動を切れ目なく続けることで「目に見える成果」を出してゆくこと、特に多くの課題が並行して走る中で、それぞれに成果を出して行けばいいのです。

(3)「派手なプレゼンや押しの強いディベート能力は必要ない」
 アメリカの名門大学というと、授業の多くがディスカッション形式であって、ディベートやプレゼンの能力がないと認められない、そんなイメージが広がっているようです。確かに人前で話す能力や、思考を整理して表現する能力は必要でしょう。

 ですが、それは強引に金融商品を販売するセールスのプレゼンや、検事と対決する弁護士のディベートといったものとは異なります。考え方の違う相手と共存しながら議論全体の「成果」を求めるとか、相手の話をキチンとよく聞く、他人の発言の優れた点に反応するといった誠実な姿勢が要求されます。俗に言う「白熱教室」は何もケンカ腰で議論をする場ではないのです。

 その意味で、日本という異文化、異なった文明を経験した学生は、むしろ歓迎されると言っていいと思います。今、アメリカの名門大学は世界から優秀な留学生を集めようと躍起になっていますが、それはアメリカの価値観を世界に広めたいからではありません。むしろ反対で、アメリカの価値観に限界を感じているから、異文化をどんどん持ち込んで欲しいのです。

 その意味で、日本の文化をバックグラウンドとしつつ、決して雄弁ではなくても論理的で誠実なコミュニケーション能力を持った若者を、アメリカの名門大学は待っていると言っていいでしょう。人口、経済力、日米の関係の近さといったことと比較して、日本からアメリカの名門大学に学部段階で留学する学生は極端に少ないのが現状です。もっと来て欲しいという思いは、アメリカの大学側にも強くあるのです。

 本書は私が過去17年にわたって、アメリカで高校生を指導してきた経験に基いて、アメリカの名門大学の「入試制度の詳細」と「合格基準」を分析したものです。是非ともご一読をいただければと思います。

<書籍新刊発売のお知らせ>
ブログ筆者の冷泉彰彦氏の新著『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(阪急コミュニケーションズ刊)は、本日(31日)より全国の書店、および電子書籍の各書店で発売されています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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