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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
被災地へ、被災地から(その1)
5月27日(金)、岩手県庁のご厚意で県商工労働観光部による被災地巡回に同行をお許しいただき、3月11日の大津波で甚大な被害を受けた陸前高田市と大船渡市を訪問させていただきました。陸前高田では、市役所の企画部で詳しいお話も聞かせていただいています。今回は、まずその第一印象から。
(異変、清流に舞うカモメ)
 県庁所在地の盛岡から早池峰山麓を南下、遠野の南を通ると道は鮎釣りで有名という気仙川の清流に沿って下って行った。新緑が初夏の陽光に輝くなか、澄み切った流れが岩間に水しぶきをあげる光景は平和そのもの。だが、少し下ったある地点に異変が起きていた。白いカモメが低空を舞っているのだ。河口から8キロ地点。本来はあってはならない潮の異臭は、そこまで津波が遡上したことを物語る。カモメの舞う下には瓦礫。そこから先は世界が一変していた。
(陸前高田、全的破壊)
 市街地に入ると、そこにあったのは全てが破壊された世界だった。住宅も商店も工場も、何もかもが流され何も残っていない。造り酒屋さんの跡には鉄製の醸造タンクが散乱するのみ。鉄筋コンクリートの建物には原型をとどめているものもあるが、中は瓦礫。その中にポツンと交番が残っていた。中には花瓶に美しい花が数輪。二ヶ月前の殉職と、現在形での家族の悲しみを示す花は、しかし毅然と色彩を保っていた。その近くには無残に押し潰された救急車の残骸が何故か撤去されずにあった。車内で殉職された方があったのだろうか? 搬送中に津波に呑まれたのだろうか? その残骸は、人を救えなかった無念を語っているように思えた。
(非常時の絆)
 それにしても、この困難な環境下、二カ月で大きな瓦礫を集積し、危険な車両の残骸を集約、更には市内の主要な道路を開通させたという人々の努力には畏敬を覚える。行き交う自衛隊、警察の車両では、お互いに黙礼が交わされ、その表情には生気がある。気温が上昇する中、市の東部の水田地帯では品川ナンバー、警視庁機動隊によるご遺体捜索が進行中。今でも発見が続いているという。お邪魔した仮設市役所でも、亡くなった多くの職員に代わって県から、あるいは他県から派遣されたメンバーも一体となって高い士気。戸羽市長にもお目にかかったが、個人的な悲劇を抱えながらも透明な笑顔に感銘を受ける。
(国家マターという意味)
 市の企画部の方々と意見交換。国土が痛み、国民が失われたというのは国家マターという議論を続ける中で、次のようなことを申し上げた。「陸前高田は地方であるけれども日本国の一部。それ故に住民は地方税と国税を払っている。今回の被災は確かに陸前高田で起きたが、紛れもなく日本国で起きたこと。国家に復興の責任があるのは明白」その責任への自覚があるのであれば、今回の内閣不信任案騒動など起きうるはずもない。
(インフラという責任)
  インフラの復興とハコモノ行政とは全く別。ハコモノ行政は建設という浪費に始まって維持コスト負担の破綻に終わる壮大なムダ。一方でインフラ復興というのは、経済合理性が回ってゆくための最低条件の整備に他ならない。にも関わらず、産業再生、防災体制再建、都市計画、交通インフラ、どの分野についても国の方針は見えない。現場の復興作業も、初期のクリーンアップのフェーズを抜けつつある今、長期ビジョン、つまり復興のあるべき姿なくしては先へ進めない段階へ来ている。
(大船渡、全く異なる困難の質)
 全的破壊の中から全的復興を目指す陸前高田と比較すると、大船渡の抱える困難は別次元と認識。死者・不明者で言えば、陸前高田の2179に対して、人口が約二倍の大船渡は466。被災「率」は一桁違う。だが、大船渡の復興が10倍楽かというと全く違う。入り組んだ谷に部分的に津波が遡上しており、住宅地の被害は一律でない中、瓦礫の処理は進んでいない。無傷の住宅地に文化施設から2区画行った地域に全壊家屋があり、そこの住民はその施設を避難所にしているという過酷なコントラスト。それ以上に深刻なのは、雇用の中心であった工業団地が深刻なダメージを受けていること。一見すると無傷の住宅地、商店街にも地域経済潰滅の危機が迫っている。
(つづく)
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