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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
2010年代のグローバリズムはどうアップデートされるべきなのか?
吉崎達彦氏のニューズレター『溜池通信』の最新号は、これからの10年がどんな時代になるのかを占う重要な議論を提起していると思います。1990年代は「グローバリズムの時代」、2000年代は「グローバリズムのバックラッシュの時代」であると冷静な総括を行った上で、これからの10年は「グローバル化が反撃に出て、時代が進む」という見通しを提示している、これは重要な指摘です。
このコラムの冒頭では、私がJMMで書いた、アメリカの「前向きな年明けの光景」を引用してくださっていることもあり、折角ですので「タスキを引き継ぐ」ような形で「2010年代のグローバリズム」はどうなるのか? そして90年代のクローバリズムとはどう違ってゆくのか、について論じてみたいと思います。2010年代にグローバリズムが「反撃」に出るとして、90年代とはどう違うのか? 恐らくそれは4つの点に集約できるのではないかと思います。
(1)「自由+民主主義+科学の万能+市場経済の合理性」という単純な価値観から「自然観や人間観の多様化、部分的な統制や介入による市場経済へのコントロール、多様なグループ相互の威信の尊重」への変化が起きています。90年代のグローバリズムというのは、冷戦の終焉に伴って「歴史の終わり」(フランシス・フクヤマ)などという言説が流行するほどに「自由と民主主義」そして市場を中心とした経済合理性や科学至上主義が信じられた時代でした。ですが、2000年代にその弊害が噴出した結果、2010年代は価値観を多様化させながら、単一の価値観が暴走して他の文化圏の名誉を否定したり、あるいはバブルを生じたりするのを防止しようという時代になると思われます。ゲームのルールも「世界を束ねる価値観の勝者になりたがる」プレーヤーではなく「多様な価値観を認める中で、無用な紛争やバブルを回避しつつ、より精緻に実利を求めてゆく」プレーヤーに有利になるように変化するのではないでしょうか。
(2)「ハードな現金」より「余裕のある信用力」、「モノや一過性のサービスの販売」より「価値観の共有や、安心感、信頼感をベースとした長期継続可能な関係性のビジネス」へのシフトがより徹底されて行くでしょう。対消費者におけるブランド力ということでもそうですし、国家間の、あるいは地域間の関係性という意味でもそうなると思います。
(3)90年代までのグローバリズムや国際化というのは、限られた「国際都市」がヒト・モノ・カネの「ハブ機能」を持っていた時代でした。ですが、2010年代のグローバリズムというのは、各国の特徴ある地方が自分たちとの相性の良い他国の地方とビジネスやカルチャーのパートナーシップを直接結んで行く時代になるのだと思います。肥大化した「国際都市」は、グローバリズムの結節点の地位からは滑り落ちるでしょう。何故なら、そこには90年代から2000年代の弱肉強食やバブルの膨張と崩壊の記憶が鮮明だということがありますし、消費に特化した大都市というのは生産や生活の拠点としてフルスペックではないということ、そして何よりも自然観や人間観のキャラが摩耗した文化の墓場だからです。例えば、各国の「中小企業」の努力が「中央」や「最終組み立て企業」に一旦集約されて国外と結びついていた、これが90年代型であれば、2010年型は、地方のベンチャーが直接海外のパートナーと結びついてゆく時代になると思います。
(4)グローバリズムの前提となるグローブ(地球)のイメージにも、大きな変化が生まれています。90年代のグローブ(地球)とは、国際化途上の国や個人からは「無限に開かれた空間」に見えました。とにかく地球社会という広大な空間へ旅立とう、広大な空間にチャンスを求めようという単純な動機がそこにはあったのです。ですが、2010年の現在、地球社会は無限ではありません。利用可能な資源も、排出の許されるガスも有限であり、経済成長にも部分的に「ゼロサム」の要素が色濃くなりました。これからは、限りある地球社会の限界とか全体量を意識しながら、全体の調和や発展の持続性が意識される時代になると思います。成長を諦める必要はないのですが、成長が許される条件は厳しくなってくると思います。
以上の4点以外にも、グローバリズムに対する考え方を「2010年バージョン」にアップデートすることが重要です。カギを握るのは、人材育成だと思います。このような新しい次代の要請に応えられる人材を多く育てた国や地域、あるいは企業だけが勝ち残ってゆけるからです。一言で言えば、複雑さに負けずにコツコツ作業を行える人材、多様な価値観を数学の多元連立方程式のように整理しながら「答えの出ない状況に耐えていく」強さを持った人材、失敗を恐れないリスクが取れると同時に失敗への柔軟な修正力のある人材、そんなイメージになるのではないかと思います。いずれにしても、この議論、こう少し継続的に考えて行きたいと思っています。
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