コラム

「投資家パックン」と読み解く、2019年世界経済の新潮流

2018年12月25日(火)18時05分

Newsweek Japan

<2019年に注目すべきポイントは? 投資家でもあるお笑い芸人・タレントのパックンが、3つのテーマを軸に世界のトレンドを大胆予想!>

※ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「世界経済入門2019」が好評発売中。貿易戦争、AI、仮想通貨、循環型経済、ブレグジット、日本経済、そして「来るべき危機」......。トレンドワード10&投資家パックンの超解説も収録。教養としての経済知識を学び、マネーの流れを読む1冊です。
(この記事は「世界経済入門2019」より)

経済の先行きが不透明なときに、大事なのは分散化だ。あまり知られていないが、投資家でもある僕は、セクターや地域、通貨などでバランスを取り資産運用している。 仕事も、お笑いのほかにコメンテーター、コラムニストなどをやってリスク・ヘッジしている。また、パパとして、自分の子供も男と女とで分散した。 

ニューズウィークの編集者も同じ思いのようだ。この特集では専門家、学者、エリート・ビジネスパーソンだけではなく、外国人タレントの意見も聞く。立派な分散だ。

そこで、3つのテーマで2019年はどうなりそうなのか、投資家兼外国人タレントとして生意気に書こう!

◇ ◇ ◇

国際情勢

世界の人口が急増するなか、その割合は途上国が上昇し先進国が低下というように、人口構造もシフトしている。また、貧困層が減り、中間層が増えている。インドだけでも1分ごとに44人が貧困から脱出しているという。このコラムを読む5分の間に220人! コラムを書く時間を合わせると440人!

もちろん、急増する中間層、核大するマーケットは投資のポテンシャルが大きい。特に注目されているのはインドやベトナムなど、VELOCITY12と呼ばれる国々だ。僕もこれらの国が入っている株ファンドを検討中。ちなみに、「ベロシティー」は成長速度を指す。間違いやすいけど、深夜の新橋など、酔っぱらいの多い街ではない。それは「ベロベロシティー」。

変わる世界に明るい兆しもあるが、心配材料も多い。温暖化によって大量の移民が発生する。技術の進展によって大量の失業者も生まれる。税制改革がないと格差社会にも拍車が掛かる。貿易戦争が続くと世界経済が大打撃を受ける。さらに、長年国際規範や組織を構築してきたアメリカも揺らぎ、ライバルが台頭している。ロシアは軍事介入やハッキングでプレゼンスを増している。中国は一帯一路や海洋進出で勢力圏を広めようとしている。「アメリカは他国に口を出すな!」と、プーチンも習近平(シー・チンピン)も、そしてトランプも言っている。そこは足並みがそろうね。

温暖化

環境問題への意識が再び高まり始めた。大型台風が日本、アメリカ、フィリピンなどを襲っているなか、国連が報告書を発表した。早くて2030年から漁獲量や農作量の激減など、人類は気候変更による大規模な被害を受け始める可能性が高いという。恐ろしい! でも世界は動くのかな?

パリ協定から離脱を発表したトランプ米大統領は今回の報告書への感想を聞かれた際、「読まないと分からない」と言った。基本280文字以上長いものを読まないトランプ氏だから、永遠に分からないだろう。僕は、2019年中は米政府は動かないとみている。

一方、中国をはじめ多くの加盟国も、アメリカ国内でも17もの州が、パリ協定の目標を守ると宣言している。自発的に電源を100%代替エネルギーにシフトする方針を決めている自治体も増えている。トランプ抜きでも温暖化対策は進むだろう。クリーンエネルギー業界が盛り上がるはずだし、節水、省エネ系の家電メーカーなども需要が増えそう。

【関連記事】トランプ「給料を高く高く高く」政策の成績表 米経済の不安材料は?

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

韓国税務当局、顧客情報流出のクーパンに特別調査=聯

ビジネス

フジ・メディア、村上氏側に株買い増し目的など情報提

ワールド

中国、米国による船舶拿捕は「重大な国際法違反」

ビジネス

中国万科、債権者が社債の返済猶予延長を承認=関係筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story