コラム

トランプ議会演説は、普通に戻ったフリをしただけ

2017年03月09日(木)20時15分

もう一つの大きな嘘を紹介しよう。演説で「直面している問題を解決するためには、党の違いを越えなければならない」と、分裂を融和する姿勢を見せたトランプだが、その直後にまた態度が一変。ツィッターで「オバマ大統領に盗聴されていた」と主張した。

いまだにそれを裏付ける証拠を出していなくて、無根拠な錯乱作戦だとも捉えられているが、その上、オバマを「Bad (or sick) guy!」と、悪人じゃなければ精神病だと中傷している。オバマの支持者を取り込む気は全くない。融和と言いながら、そんなことよく言うわ。

ほかにも、「再びアメリカがリードする」と演説で言いながら、アメリカのODA予算を削減すると発表している。「女性の健康へ投資する」と言いながら、中絶反対という名目で、世界で数百万人もの女性が頼りにしている複数の女性保健NGOへの支援を停止する方針だ......などなど例を挙げると切りがないが、とにかく演説の内容と大統領の言動や政策が相反していることが多い。

【参考記事】「オバマが盗聴」というトランプのオルタナ・ファクトに振り回されるアメリカ政治

演説を聞いて、不良が更生したと思った人の気持ちはよく分かる。就任して1カ月でいろいろ大変だったトランプが目覚めて中道の正統派を目指すことにした、と思ったみんなが演説を大絶賛する気持ちも分かる。僕も演説を聞いて小さな夢を見始めた。確かに両津さんの言う通り、普通に戻っただけで褒められるのはおかしいかもしれない。でも、みんな更生をした人を応援したい。また道を外れないでほしいから、褒めたい!

しかし、それでも今回はもっと褒められない事態だ。どうやらトランプは更生してもいなく、一瞬、普通に戻ったフリをしただけのようだから。でも、あの希望を持てた一瞬は良かった。

僕はもう、両津さんのお説教を無視することにする。不良が更生したら褒めよう。トランプが普通に戻ったら、僕も毎日褒めることにする。4年間、毎日普通に戻ったフリをするだけでいいよ。お願い!

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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