コラム

「ぴ」と僕のニューヨーク時間

2019年12月05日(木)16時30分

ぴは12年間のニューヨーク生活で僕よりどんどん早く年を取り、一丁前の貴婦人ニューヨーカーの顔になった。毎晩、一生分の喜怒哀楽を奥歯でかみしめるようにして眠るぴの顔を、パパはこっそりのぞき込む。歯を19本以上抜いたので舌が少しぺろっとはみ出ていて、目尻には白い毛が交じる。長年一緒にいると顔つきもどこか似てくるものだ。僕とて夢を追い掛けるにはなかなか体がついてこない年齢になったが、それでもまだまだ共に歩いていこう──そう心で唱えると、以心伝心、ぴは目を開けて「明日は明日の風が吹く!」ペロッとパパの顔をなめあげた。

<本誌2019年11月26日号掲載>

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プロフィール

大江千里

ジャズピアニスト。1960年生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー後、2007年末までに18枚のオリジナルアルバムを発表。2008年、愛犬と共に渡米、ニューヨークの音楽大学ニュースクールに留学。2012年、卒業と同時にPND レコーズを設立、6枚のオリジナルジャズアルパムを発表。世界各地でライブ活動を繰り広げている。最新作はトリオ編成の『Hmmm』。2019年9月、Sony Music Masterworksと契約する。著書に『マンハッタンに陽はまた昇る――60歳から始まる青春グラフィティ』(KADOKAWA)ほか。 ニューヨーク・ブルックリン在住。

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