コラム

東京オリンピックはやったらよい しかし聖火リレーも開会式も要らない

2021年05月10日(月)13時41分
国立競技場で行われた陸上の五輪テスト大会

全力の競技、これさえあればいい(写真は9日、国立競技場で行われた陸上の五輪テスト大会)  Issei Kato-REUTERS

<競技と関係のない利益のための行事をやめれば、コロナ禍でも本来の意味ある五輪ができる>

東京オリンピックの開催に反対しない。むしろ、やるべきだと思う。

感染状況次第だが、物事の優先順位がまったく間違っている。

オリンピックは競技者のためのものだ。

彼らを見世物にして暴利をむさぼっているIOCが諸悪の根源であり、IOCが主催するオリンピックはすべて廃止にするべきだと思うし、ソルトレイクシティの賄賂スキャンダルでそうなることが決まったと思ったのだが、なぜか人々はそれをすべて忘れている。

ただし、今は、それは別の議論であり、東京オリンピックは競技者のためにやったらよい。一方、競技と無関係なものはすべてやめればよい。

聖火リレーは要らない。開会式も閉会式も要らない。選手だけだとしても、多くの競技者が集まること、そして競技と無関係なことをあえてやって、リスクをとることはない。各競技場で各競技をやったらよい。

競技と競技者さえあれば

なにか始まりの合図が必要なら、バッハでも都知事でも選手代表でも、誰でもいいが、開会の宣誓あるいは演説をネット中継すれば十分だ。

もちろん、無観客で良い。テレビ中継もやめれば、中継スタッフも要らない。それではカネにならない? カネのためにやっているからそうなる。運営できない、というが、これまでの暴利があるのだから、コロナの今回は赤字で構わない。それを東京と日本が負担することになっているようだが、それは国際世論で議論して、IOCも負担することを申し出るように仕向ければよい。

どうしてもやりたければ、テレビだけ限定的にやればよい。

あとは淡々と競技だけやればよい。

しかし、彼らは、IOC優先、収入優先、イベント優先だ。

だから、おかしいと思う人が出てくる。

オリンピックは何のためにやるのか。世界選手権を多くの競技で一緒にやるだけのことだ。

だから、競技と競技者のためだけにある。観客も応援もテレビですらも要らない。

それだけのことだ。

それらがないとオリンピックをやる意味がない、と思っている人たちが主催者だからおかしなことになる。

彼らは、競技のためではなく、競技者を見世物として利用し、カネと権力のためにやっているのだ。

それが今回のコロナで、再度、明らかになっただけのことだ。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

政府、経済対策を閣議決定 高市首相「財政の持続可能

ワールド

ホワイトハウス、女性記者を「子ブタ」と呼んだトラン

ワールド

タイ経済は非常に安定、第4四半期の回復見込む=財務

ワールド

EUと南アが重要鉱物に関する協力協定、多国間主義維
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story