最新記事
シリーズ日本再発見

サンリオファンが愛する『いちご新聞』はなぜ誕生したのか...「いちごの王さま」の「ファンシーな教養主義」

2024年03月15日(金)09時25分
帆苅基生(弘前大学教育学部助教)

「いちごの王さまのメッセージ」

まず『いちご新聞』と〈文学〉の関係を考える上で、「いちごの王さま」の存在に触れておかなければならないだろう。社長(当時)・辻信太郎の分身的存在として、「いちごの王さま」は『いちご新聞』とともに形成された。

ichigo2-230-20240306.png

また現在も『いちご新聞』の〈顔〉としてメッセージを発している。『いちご新聞』の中で、この「いちごの王さま」のメッセージにこそ、教養主義が色濃く表れる。そこでまず『いちご新聞』における「いちごの王さま」とはいかなる存在なのかを見ていきたい。

2021年から各地で開催されている「サンリオ展」の図録には、『いちご新聞』と「いちごの王さま」の関係がこのように紹介されている。

いちごの王様は『いちご新聞』をつくった平和の国の王様ですが、平和を願う気持ちだけは、どんな大国にも負けません。世界中を争いのない平和な世界にするために、「いちごの王さまからのメッセージを発信し続けています。」

『いちご新聞』は単にサンリオキャラクターの販促のためにあるのではなく、本来の目的は、「いちごの王さま」が「平和な世界」にするためにメッセージを発信することだという。

『いちご新聞』紙上では、「いちごの王さまのメッセージ」は『いちご新聞』の「社説」とされている。


後で触れるが、実際の『いちご新聞』の読者はサンリオのキャラクターのイラストを見ることが目的であった人も多かったようだ。

しかし『いちご新聞』の方針は、まず「いちごの王さま」からのメッセージを読者に向けて届けることだった。

そもそも「いちごの王さま」がサンリオのキャラクターとして形成されたのも『いちご新聞』の中であった。

1975年12月1日号のメッセージでは「いちご新聞を読んでいるみなさん、15号の表紙いかがでしたか。いちごの王さまとかわいらしいいちごの天使たちが、やっとみなさんの前に幻のベールをぬぎました」と語られているとおり、「いちごの王さま」のイラストが『いちご新聞』紙上ではじめてお披露目されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米6月建設支出、前月比0.4%減 一戸建て住宅への

ビジネス

米シェブロン、4─6月期利益が予想上回る 生産量増

ビジネス

7月ISM製造業景気指数、5カ月連続50割れ 工場

ビジネス

米労働市場にリスクの可能性、見通し変更は尚早=アト
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中