最新記事
シリーズ日本再発見

ポイ捨て最多の渋谷に現れた「ゲーム×喫煙所」の真の目的

2022年06月03日(金)14時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
渋谷

写真提供:コソド

<渋谷のセンター街。路上喫煙禁止のある通りに、5月21日から土日限定で「投票型喫煙所」が設置されている。「投票型」とは何なのか。何のために作られたのか>

東京・渋谷――。

渋谷駅方面からセンター街を2~3分歩くと、左手に、小さな通りの入り口が現れる。その通りはわずか15メートルほどで突き当たりとなるが、そこを右に直角に折れると、15メートルほど先でまた別の通りに抜けられる。

この狭いL字型の一角が「宇田川クランクストリート」だ。死角が多く、かつてはたばこの吸い殻やごみが散乱し、犯罪行為やけんかも頻繁にあるなど、荒んだ通りとして怖がられたという。

現在は商店街組織を中心に清掃やパトロールを行っており、「再生」に向けた努力が進む。路上喫煙は禁止されているエリアだが、そんなわけで、たばこを吸う人が絶えないという実態があった。

5月21日から土日限定で、この「宇田川クランクストリート」に「投票型喫煙所」が設置された(設置時間は12~21時)。手掛けたのは、コソド。心地よい分煙の実現を目指す喫煙所ブランド「THE TOBACCO」を運営し、喫煙所のコンサルティング事業なども手掛けるスタートアップだ。

「投票型喫煙所」とは何だろう。土曜日の午後、「宇田川クランクストリート」に向かうと、それは通りの突き当たりにあった。

japan202206-shibuya2.jpg

カラフルな「投票型灰皿」は宇田川クランクストリートの入り口から見ても目立つ。「あれは何だろう」と気になって奥まで入って行く人も多そうだ 撮影:Newsweek Japan

お世辞にも綺麗な場所とは言えないが、カラフルな5台の「投票型灰皿」が通りの入り口からでも見え、灰色の風景の中で異彩を放っている。2方向の入り口の両方に、「ポイ捨て投票所」と書かれた案内板も設置されていた。

通りに入り、突き当たりへ。

「あなたが手に入れたいのは、どっちですか?
 ―― A. 永遠の愛、そして一文なし/B. 一攫千金、そして永遠の孤独」
「これから住むなら、どっちがいいですか?
 ―― A. 通勤3分のアパート/B. 通勤3時間の豪邸」

1台1台の「灰皿」にそれぞれ、究極の二択が書かれ、2つに分かれた灰皿のどちらかに「投票」する仕組みになっている。たばこをポイ捨てせず、ゲーム感覚で楽しみながら、能動的に、吸い殻を灰皿に捨てたくなるよう促しているわけだ。

japan202206-shibuya-3.jpg

「多くの人に面白がってもらえた。『捨てる』ではなく『参加する』気分になったという声ももらった」と、コソドの山下氏 写真提供:コソド

「渋谷に来る人たちはみんなこの場所に吸いに来るの、(これを作った人は)なんで知ってたんだろうね」と、そこにいたカップルの女性が独り言のように言った。男性はたばこを1本吸い終えると、「投票」をして、ふたりは出て行った。

後日、取材時のそんな目撃談を伝えると、コソドの代表取締役、山下悟郎氏は「それは知ってますよ。何度かあそこでごみ拾いをやりましたから」と笑った。

コソドはなぜ、この場所にこんなユニークな喫煙所を作ったのだろうか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国万科の社債37億元、返済猶予期間を30日に延長

ワールド

中国軍、台湾周辺で「正義の使命」演習開始 30日に

ビジネス

先行きの利上げペース、「数カ月に一回」の声も=日銀

ビジネス

スポット銀が最高値更新、初めて80ドル突破
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中