最新記事
シリーズ日本再発見

日本でキャンプ人気再燃! 今度こそ「大丈夫」と期待される理由

2019年07月23日(火)16時50分
高野智宏

japan190723camping-2.jpg

Sarasa Suzuki-iStock.

そんな女性たちの承認欲求を最も満たしてくれるアウトドアレジャーといえば、「グラマラス(魅惑的)」と「キャンピング」の造語を語源とする「グランピング」にほかならない。

グランピング(glamping)という言葉は2005年にはイギリスで既に使われていたが、日本においては2015年にオープンした、星野リゾートが経営する「星のや富士」がグランピングの認知度を高めたとされる。今では全国各地にグランピング施設があり、人気を博している。

なお、グランピングの源流は、1900年代に始まった探検や狩猟などを目的とした欧米の貴族や富裕層によるアフリカ旅行にあるという。なるほど、宿泊施設に食事もゴージャスな「インスタ映え」するアウトドア体験を手ぶらでできるとなれば、不自由をも楽しむ本格的なアウトドア体験を望まない女性にとって大きな魅力だろう。100年前の貴族も驚くに違いない。

第1次ブーム失速の要因を読み解くと...

冒頭で「再びブームを迎えている」と記述したとおり、実は1990年代にもキャンプを筆頭とするアウトドアブームがあった。ピークは1996年でキャンプ人口は1580万人と、前述した2017年の840万人の約2倍。現在をブームと称するのがはばかられるほどの盛り上がりだったのだ。当時の状況を堺さんに聞いた。

「現在と同様に人口推計と比例していて、当時、キャンプを楽しんでいたのが最も人口の多い団塊世代です。しかもバブル崩壊後ということもあり、ホテルや旅館に宿泊するよりも経済的なレジャーとして人気となった。また、車の新たなカテゴリーであったRV車が空前の人気を誇っており、メーカーが大規模なアウトドアイベントを仕掛けるなど、自動車業界が人気を牽引していました」

ちなみに、1996年といえばパソコンのOS「Windows 95」の発売をきっかけに、世界中でインターネットが爆発的に普及したネット黎明期だ。1996年を頂点にアウトドアブームが徐々に衰退していった背景には、ネット文化の拡大をきっかけとする、レジャーのアウトドア化からインドア化への流れがあったと言えるだろう。

ただし、堺さんの説明によれば、衰退の原因はそれだけではない。長引く不況が家計に悪影響を及ぼしたこと、キャンプを楽しんでいた団塊世代家庭の子供たちが小学生、中学生と成長していき、家族とキャンプに行く機会が減ったことも一因だという。

そうしたマイナス要因は、現在のキャンプブームでは少ないはずだ。キャンプの中心は90年代も今もファミリー層だが、最近はひとりで楽しむ「ソロキャンプ」や、SNSなどで参加者を募り自由に集まり自由に解散する「部族キャンプ」(小さなテントが集う様子からこう呼ばれる)、キャンプ場ではなく野山をフィールドとする、よりハードな「野営」や「ブッシュクラフト」など、多彩な方向に展開しているからだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く

ビジネス

英製造業PMI、10月49.7に改善 ジャガー生産

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、10月は50 輸出受注が4カ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中