コラム

K-POP、韓国語で歌ってほしいな

2010年09月21日(火)17時25分

 今年の夏は暑かった。K-POPもアツかった。

 東方神起やBIGBANGなど、これまで男性グループの日本進出が目立っていた韓国歌手。だが今年の夏は女性アイドルグループが続々と日本デビューした。ワイドショーをはじめ既にさまざまなメディアで紹介されているからご存知の方も多いと思うが、ちょこっとまとめると──。

「少女時代」 
脚線美と一糸乱れぬダンスフォーメーションが売りの9人組。ちなみに所属事務所は、空中分解した東方神起と同じ韓国一の芸能事務所SMエンターテインメント。

「KARA」
少女時代がセクシー系というなら、KARAはどちらかというとキュート路線が狙いの5人。

「4 minutes」
韓国で昨年デビューしたばかりの5人。少女時代が清純派セクシーというなら、こちらはパンチのあるセクシーさ。ヒョナの骨盤の動きが尋常じゃない。

「Brown Eyed Girls」
大人な妖しい色気が漂う4人。平均年齢も上の3組に比べて高い。昨年韓国でリリースした「アブラカダブラ」の、腕組みしながら上から目線で腰を揺らす振り付け、通称「小生意気ダンス」がちょっとした社会現象に。

 この新たな韓流の波、オリコンチャートでも上位に食い込んだり、情報番組で特集されるなど、かなり人気のよう。各種メディアの分析を読んだり聞いたりしていると、なんでも男性より若い女の子にすごい人気なんだとか。アキバ男子を狙った「カワユイ」系の日本のアイドルに対し、韓国アイドルはスタイルが良くダンスも洗練されていて、そんなセクシーな姿に日本の女の子たちは「カッコイイ」と憧れを抱いているらしい。かたや「草食系」に向かっている日本男児は圧倒され、腰が引けてしまうんだと。......面白い分析だ。

 それはさておき、ちと気になることがある。女性アイドルに限らず、日本に進出してくる韓国歌手は、どうして日本語で歌うんだろう。母国語で歌ったほうがいくらか楽だし、本領が発揮できるだろうに。

 これは私の悪い癖なんだが、歌を聴くとき歌詞をあまり聴かず、音とリズムしか耳に入っていないことが多い。だから、韓国人歌手が日本語で歌っているのを聞くと、やはりどこかで日本語ネイティブの私の耳が、その発音に反応して引っかかってしまうのだ。日本進出のためにあれだけ日本語を話せるようになっている皆さんには本当に頭が下がる思いなのだが、歌は韓国語で歌ってほしい。

 たぶん歌詞を伝えたいとか、日本での活動をバックアップしてる事務所の方針とかもあるんだろう。でも、バラードならまだしも最近のK-POPの中心はダンスミュージックやフックソング(同じフレーズを何回も繰り返す耳にキャッチーな曲)。個人的には歌詞の内容は二の次だし、それより脚線美と腰の動きにクラクラしちゃう。

 さらに言うなら、韓国語(朝鮮語)の利点を台無しにしてるようで、もったいない。韓国のポップスを聴いていて思った。なんか「チャッ・チュッ・チョッ」「ジャ・ジュ・ジョ」「パ・ピ・プ・ペ・ポ」といった音が多い気がする。そのせいか、なんか強弱が激しくて、ノリがいいような気がする。特にヒップホップ、なかでもラップは日本語のそれよりキレがあるし、フローもなめらかな気がする──。

 で、ちょっと調べたり韓国語が流暢な友人に聞いたりしたところ、やはりワケがあった。韓国語には、子音で終わる語(パッチム)がたくさんあったり、激音(息を強く吐き出す発音)や濃音(息を出さずにする発音、日本語の促音「っ」に近く「っ○○」と語頭にくることも)があるからだそうだ。これで、音節が短く歯切れのいいリズムができるというわけ。ラップなら韻をふんだときにキレが出るし、パッチムの後に母音から始まる語が続けば「子音+母音」でリエゾン(連音化)が起きて無音子音が発音されるので、なめらかなフローを出せる。

 やっぱりもったいないよ、K-POP。せっかくなんだから、私たちがいつも耳にしてるのとは違う「音」を聞かせてほしいな。

──編集部・中村美鈴

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story