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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
イラン石打ち刑と『龍馬伝』の以蔵
7月8日、WEB独占記事「残虐『石打ち死刑』目前のイラン女性」をアップすると決めたとき、なぜか大河ドラマ『龍馬伝』の以蔵を思い出した。土佐藩の政治家・吉田東洋を暗殺した首謀者を明かすよう強要され、むち打ちなどで延々と拷問される「人斬り以蔵」こと岡田以蔵だ。師と仰ぐ武市半平太のせいでこんな目に遭うのかと思うと、ふびんでならない。
状況はまったく異なるが、イランで姦通罪で有罪となった女性サキネ・モハマディ・アシュティアニ(43)にも同情を禁じ得ない。彼女は既に99回のむち打ちの刑を受けた。さらに石打ちによる死刑が宣告され、自白は強要されたものだとして控訴したが、認められなかった。政府が国際世論に屈しない限り、彼女は近日中にも土に胸まで埋められ、石を投げつけられて処刑されるという。
国によって価値観や法制度が異なるのは当然とはいえ、石打ち刑の残虐性には慄然とする。あえて即死させず、なぶり殺しにするというのだから。しかも英ガーディアン紙によると、イランの裁判官は確たる証拠がなくても死刑判決を出すことができるという。21世紀のイランは江戸時代の土佐藩と同じレベルなのか(土佐藩には裁判制度はなかったかもしれないが、制度があればいいというわけではない)。
以蔵は確かにかわいそうだが、それでも1世紀以上も昔の人だ。イランのアシュティアニは、2010年の今、不確かな罪のために身の毛もよだつ残虐な刑に直面している。
追記:その後の報道によると、イラン当局はアシュティアニに石打ち刑が執行されることはないと発表した。だが人権擁護団体などは、絞首刑による死刑の可能性は残っているとして警戒している(7月11日記)。
──編集部・山際博士
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