コラム

Newsで英語:BPは2兆円預けろ

2010年06月16日(水)10時27分

 原油流出でえらい迷惑しとるアメリカ人の被害をちゃんと補償できるんか? 株主への配当なんかしとる場合と違うやろ? 特別の口座を作って補償に充てるカネをそこに預けておかんかい──オバマ政権は英石油大手BPにそう迫っている。そんな口座を指す言葉がこれ。


【escrow account】 (エスクロー・アカウント)

預託口座。資金が受取人に支払われるまで当事者に代わって第三者が管理する口座・基金。


「エスクロー」は日本語になっているのでご存じの読者も多いだろう。いろいろな商取引で使われている仕組みで、私は使ったことがないがネットオークションでも定着しているようだ。

 ネットオークションのエスクローサービスの場合、モノを売り買いする当事者同士が直接カネの受け渡しをせず、買い手が品物を受け取るまで第三者(エスクローサービス業者)が代金を預かる。こうすることで安全な取引を手助けするという。

 同じエスクローという言葉が、原油流出関連のニュースで使われ始めた。被害の補償は商取引とは違うけれど、第三者がいったんお金を預かるという点がエスクローの肝だ。BP用のエスクロー口座が作られるとしたら、お金を出すのはもちろんBPで、受取人は補償を受ける個人や企業になる。お金の管理は独立した第三者委員会に委ねられる。補償を公正に素早く行うのが狙い。BP任せにすると補償を渋るかもしれないからだ。 



エスクロー escrowは動詞としても使われる。We want to make sure that money is escrowed(金が確実に預託されるようにしたい)という具合。また名詞として set money aside in escrow(金を預託しておく)という表現も見かける。

 オバマ政権は原油流出に伴うすべての被害をBPに補償させる考えだが、BPの負担額が最終的にいくらになるかはまだ分からない。米民主党の一部議員らは「とりあえず200億ドル(1兆8000億円)預けろ」と要求した。こうした動きを受けて15日、BPの格付けがさらに引き下げられた。そんな大金を預託すれば財務を圧迫するとの見方からだ。

 もしかするとエスクローがBPの寿命を縮めることになるのだろうか。

──編集部・山際博士


このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story