コラム

「密約」の存在を、よその国に教えられて

2010年03月15日(月)19時00分

 小学校の夏休み、8月6日は登校日と決まっていた。体育館に集まって黙祷し、教室に戻って被爆者の写真や映像を見たりした。火傷でただれた皮膚の画を初めて見た日の夜、怖くて眠れなくなり、母の布団にもぐりこんだ。

 少し大きくなって、「持たず、作らず、持ち込ませず」を習った。なんだか誇らしかった。

 もう少し大きくなって、「核の傘」のことや「駐留米軍の費用負担」について知った。なんだかとてもがっかりした。

 もっと大きくなって、「密約」が交わされていたらしいことを知った。もういい大人になっていたし、外交上、安全保障上、「機密」扱いにせざるを得ないものがあることは分かっていたつもりだ。それでも、なんだかひどく裏切られた気がした。

 そして、やはり「密約」は存在していた。しかも、それがよその国の公文書で明らかにされたことがもっと悲しい。

 5年ほど前、大戦後の日米関係を研究していた友人の手伝いで、メリーランド州の米国立公文書館に行ったことがある。蔵書の量と公開度、検索の効率化に驚いた。紙切れに走り書きした、ただのメモにしか見えないようなものも残されていた。スキャナー持参でせっせとコピーする人が何人も。ここを真剣に探せば、何かしら重要な史実が出てくるだろうと思わせる雰囲気だった。

 一方の日本はといえば、存在するはずの文書が見当たらないらしい。情報公開法が施行される直前に、慌てふためいて燃やしてしまったらしい。

 ばあさんになる頃までには、どんな新しい「密約」が明らかにされるのだろう。それらの存在もまた、どこかの国に教えてもらうのだろうか。

──編集部・中村美鈴

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領「次はキューバ」、具体策には触れず

ワールド

ロシア、4月1日からガソリン輸出禁止措置 副首相が

ワールド

米トマホーク850発以上使用、イラン攻撃4週間 国

ワールド

アングル:米民主党、牙城カリフォルニア州の知事選で
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 6
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 7
    日本経済にとって、円高/円安はどちらが「お得」な…
  • 8
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 9
    アメリカのストーカー対策、日本との違いを考える
  • 10
    ニュースでよく聞く「東京外国為替市場」は、実際は…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story