コラム

安全なカナダでなぜ? 「トラック軍団占拠」の影にいる者

2022年02月09日(水)11時30分

ただし、強制排除はデモ隊をさらに過激化させかねないため、ハードルが高い。それは理由のない心配ではない。

例えば、昨年1月にアメリカで発生した連邦議会議事堂占拠事件では、何人もの警官が暴徒に味方した。

多くの欧米諸国では、イスラーム過激派によるものを上回るペースで白人極右によるテロ事件が多発しているが、トランプ政権下でそのイデオローグとして暗躍した Q-Anonの信奉者は警察や軍隊のなかにまでいるのだ。

これをカナダに置き換えれば、フリーダム・コンボイの強制排除は一歩間違えればヤブヘビになりかねない。

かといって、放置すればスリー・パーセンターなど極右団体をますます増長させるだろう。

いかに事態を収拾するかに「正解」はないかもしれないが、それがコロナ対策だけでなく今後の国内テロ対策にも関わってくるだけに、カナダ政府の手腕が問われていることは間違いないだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

【お詫びと訂正】
タイトル、本文に誤った記述がありました。ワクチン義務化に反対するトラック運転手やその関係者が中心地を占拠し、市長が非常事態を宣言したのは「トロント」ではなく、首都「オタワ」です。読者の皆さまにお詫び申し上げますと共に当該箇所を訂正致しました。なお、この抗議はトロントをはじめカナダ全土に広がっています(編集部:2022年2月10日11時50分)

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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