コラム

安全なカナダでなぜ? 「トラック軍団占拠」の影にいる者

2022年02月09日(水)11時30分
フリーダム・コンボイ

ワクチン義務化に反対し、道路を封鎖するトラック(2月8日、オタワ) Blair Gable-REUTERS


・カナダの首都オタワの中心地を1000台近い大型トラックが1週間にわたって占拠している。

・その多くはワクチン義務化に反対するトラック運転手やその関係者だが、これに極右が紛れ、デモを煽っている。

・占拠の長期化にオタワ市は緊急事態を宣言したが、強硬手段は極右をさらに過激化させかねないため、カナダ政府の手腕が問われている。

カナダの首都オタワでは1月末から、その中心部が無数のトラックによって占拠されている。デモ隊の中心にいるのはワクチン接種の義務化に抗議するトラック運転手だが、その影にはカナダ政府に「テロ組織」に指定される極右団体の姿もある。

オタワの緊急事態宣言

オタワのワトソン市長は2月7日、緊急事態を宣言した。オタワ中心地が1週間にわたってトラックの大群に占拠され、交通が遮断されて市民生活に悪影響が出ているというのだ。このデモ隊はフリーダム・コンボイ(Freedom Convoy)を名乗っている。

その名の通り、フリーダム・コンボイに参加している多くは長距離トラックの運転手だ。

アメリカとの国境を超えて物資を輸送するトラック運転手に、カナダ政府は1月、コロナワクチンの接種を義務づけた。これに抗議するフリーダム・コンボイは、オタワ中心地に陣取り、カナダ政府にワクチン接種義務化の撤廃を要求している。

その主張は「自分の健康を公権力によって決定されることが権利の侵害にあたる」。言い換えると、「自分のことを自分で決める自由」を強調するからフリーダム・コンボイというわけだ。

しかし、それと並行して、商店のショーウィンドウが破壊されたり、四六時中クラクションが鳴り響いたり、マスクを着用している者や病院関係者などが罵声を浴びせられるといったトラブルも増えており、6日までに7人が器物損壊や窃盗で逮捕されている。あるオタワ市民はアル・ジャズィーラの取材に「安心して道も歩けない...占領されたみたいだ」と答えている。

それぞれの国の「平和度」を表す世界平和指数(2021年版)でカナダは第10位にランクインした。ここでは犯罪発生率の低さ、政治的安定、社会・経済システムの安定に加えて、フレンドリーな人が多いことなどが評価されている。

その国で発生したオタワ占拠は、コロナ禍をきっかけに世界各地で玉突きのように広がる混乱を象徴する。

デモを煽る「テロ組織」

もっとも、このデモはトラック運転手全体からの抗議というわけではなく、むしろその中でも少数派に属する。運送業者の連合体であるカナダトラック連合は「85%の運転手はワクチンを接種している」として、オタワ占拠に反対する声明を出している。

圧倒的に少数派であるはずだが、家族や友人を同伴したトラック運転手が集まることで、フリーダム・コンボイは1000人以上の規模に膨れ上がったとみられる。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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