日本はTICAD7テコに中国から対アフリカ融資を取り戻せるか
中国が融資にほとんど何も条件をつけないのと対照的に、IMFや世界銀行は融資の引き換えに財政赤字の削減などを求める。この条件の厳しさが、アフリカ各国を中国に向かわせた一因である。
しかし、中国からの借金が膨らむに連れ、アフリカには再びIMFや世界銀行に支援を求める動きも生まれている。今年4月、コンゴ共和国はIMFに支援を要請し、これと並行して中国とは返済期間の延長などの協議を開始。7月にIMFは約4億5000万ドルの融資を決定した。
こうした事態の発生は、中国にとって「高利貸し」のイメージがこれまで以上に広がることを意味する。TICAD7で日本がアフリカ各国をIMFや世界銀行に向かわせようとしたことは、この動きを加速させるものといえる。
「日中冷戦」のもとの援助競争
こうした日本の「中国封じ」は、アフリカをめぐる日中のレースが新しいステージに入ったことを象徴する。
アフリカ進出を図る日本政府の目には、2000年代以降、急速にアフリカに進出する中国が一種の脅威と映った。その結果、日本政府はアフリカ向け援助額を増加させ、これに中国も援助額の増加で応じる「援助競争」が本格化したのだ。
付け加えると、そこには「近親憎悪」の一面もある。医療や教育といった社会サービスを援助の柱とする欧米諸国と異なり、日中両国はインフラ整備が援助の中核を占める点で共通するため、なおさら差別化が難しいのだ。
こうして激化した日中のレースは、米ソが勢力争いのために援助を惜しまなかった冷戦時代を彷彿とさせる。
深層でのつばぜり合い
ところが、援助競争は日中にとって負担が大きく、永久に続けられるものではなかった。とりわけ、日本にとっては、対アフリカ貿易額で中国の約10分の1に過ぎない状況で援助が頼みの綱だったが、有権者のアフリカへの関心が低いなか、援助額を増やし続けることが難しかったといえる。
その一方で、一時は首脳会談すら行われなかった日中関係は、2017年頃から徐々に改善。昨年6月には安倍首相が「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と宣言するに至り、これと前後してアフリカを含む開発途上国での援助で日中が連携する協議も進められてきた。
これらを反映して、2016年のTICAD6では、援助の増額がストップ。一方、中国もこれとほぼ時を同じくして、援助の増額をやめた。こうして、金額を競う日中の援助競争は、ひと段落ついたのである。
ただし、日中の潜在的な緊張に変化はない。TICAD7で打ち出された債務管理は、公的な資金協力をこれ以上増やせない日本政府が、先述のコンゴで生まれたアフリカでの変化を踏まえて打ち出した新たな手法といえるだろう。
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